【F1】小林可夢偉、開幕戦「0周リタイア」の舞台裏 (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 今の可夢偉は、ポイントや順位という“結果”にとらわれていない。0周リタイアという“結果”そのものに悔いはない。ただ、自分たちの戦いができなかったことが悔やまれるだけだ。

「実際のところ、僕らにとって(ライバルと)勝負ができるのはシーズン中盤くらいからやと思う。そこまでにどれだけ開発のスピードを上げて、しっかり前に追いついていけるか。どれだけ良い形でシーズンを終われるかっていうことが一番大切なんです」

 1周もできずにシーズン初戦を終えれば、きっと多くのドライバーが「まだ開幕していないような気分だ」などと語るだろう。しかし可夢偉は、愚問だと言わんばかりに迷いなく即答した。

「開幕はしていますよ。残り19戦のままじゃダメでしょ?」

 開幕戦を終えて、残りは18戦。確かに、21台のマシンと順位を競う勝負、305kmを1秒でも速く走りきる勝負は、最初の一歩さえ踏み出すことはできなかった。しかし、今の可夢偉とケータハムに必要なのは“結果”ではない。ケータハムというチームを成長させていく可夢偉の長い戦いは、もうとっくに始まっているのだ。

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