【F1】小林可夢偉、開幕戦「0周リタイア」の舞台裏 (3ページ目)
しかし可夢偉は、それを改善することこそが自分に課せられた使命なのだということを理解している。だからこそ、敢えてこの予選結果にも笑顔を見せることなく、厳しい態度をチームに見せたのだ。
そして、浮かれることなく、当初の目的を忘れることもなく、決勝へと目を向けた。
「下手に勝負せずにタイヤをセーブして、自分のレース、現実的なレースをしたいと思います。まずは走り切ってデータをできるだけ集めないと」
そう言って臨んだはずの決勝が、まさかスタート直後の1コーナーで終わってしまうとは夢にも思わなかった。
混雑の中で不要なリスクを避けるべく早めにブレーキングしたにもかかわらず、派手にフロントブレーキがロックしてタイヤスモークが上がり、前走車のリアに激しく突っ込んだ。ケータハムのフロント周りは大破し、グラベルに突き刺さってマシンは止まった。
開幕戦のオーストラリアGPはスタート直後にリタイアと厳しい結果になった小林可夢偉
「早くブレーキを踏んだつもりやったのに、ロックして止まり切れなかったんです。前に(キミ・)ライコネン(フェラーリ)がいてそれだけは避けたんですけど、パッと前を見たら(フェリペ・)マッサ(ウイリアムズ)がいて、あれはもう避けられないですよ。
久々のF1やし、あまりにもスタート直後やったから、何があったのか分からなかった。だから自分の感覚がおかしかったのかなと思って最初はマッサに謝ったんですけど、データを見るとリアのブレーキ(制動力)がゼロで、前のブレーキしか効いてない状態やったんで、『そら絶対止まれへんわな』と納得しました」
レース後、スチュワード(競技会審査委員会)に対しての説明を終え、可夢偉がパドックの一番隅にあるケータハムのガレージエリアに戻ってきた頃には、すでに辺りは夕闇に包まれていた。レースは下馬評通りメルセデスAMGのニコ・ロズベルグが圧勝。新人ケビン・マグヌッセン(マクラーレン)の2位表彰台獲得やレッドブルの規定違反に揺れる上位勢の喧噪を遥か遠くに見やりながら、可夢偉は淡々と語った。
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