【F1】小林可夢偉、開幕戦「0周リタイア」の舞台裏 (2ページ目)
コース上を走る可夢偉のマシンを見ると、ブレーキングからコーナリングするところでリアがふらつき、コーナーの出口に向けても明らかに攻めたドライビングはできていない。
「攻めて走るのは恐いですよ、今はリアルに。このクルマをコントロールできる自信がないから、そこまで行けてない。縁石なんて乗れないですよ」
だからこそ、Q2に進んでも浅溝のインターミディエイトタイヤを履いてアタックするリスクは冒さず、15番手を甘んじて受け容れた。
そんな状態で走ることも、今の可夢偉は受け容れている。上位で争える状況ではないからこそ、"結果"よりも未来に向けた道筋だけを見ている。ライバルたちとの戦いではなく、自分たちの戦いに集中しているのだ。
この日、可夢偉が予選15位という"結果"に目もくれず、深刻に捉えていたのは、グランプリの実戦を迎えて初めて露わになったこのチームの問題点だった。
土曜午前のフリー走行の後、可夢偉はサスペンションのセッティングを変えて午後の予選に臨むつもりだった。燃料漏れトラブルで金曜日のフリー走行ではわずか1周しか走ることができず、土曜午前の1時間は、トラブル続きのルノー製パワーユニットの調整に充てていたからだ。
しかし、可夢偉の申し出に応えるだけの力は、今のケータハムにはなかった。予選までに2時間しかないインターバルの間に、可夢偉が望んだ作業が間に合う確証がなかったからだ。
「キャンバーを変えるのに1時間以上かかるって言うんですよ。いろいろ変えられると思っていたのに、いろいろ言うても『それも無理、それも無理、それも無理』って。『ほんなら何ができんの? このままで行くしかないやん』って。インターバルが2時間しかないのに、その間にこのチームはミーティングを1時間やっているんです。そら無理でしょ?(苦笑) そういうとこから見直さなあかんっていうことなんです」
主にパワーユニットの熟成不足に起因するトラブルのために、可夢偉は開幕前のテストで思い通りに走り込むことができなかった。それゆえ、マシンの煮詰め作業だけでなく、チーム運営の煮詰めもまだ十分に進められていないのだ。
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