宝塚記念は「ひと筋縄ではいかない」 激走馬のヒントはレースの歴史のなかに隠されている (2ページ目)
その代表例を挙げれば、古くは1991年のレースを制したメジロライアンがいる。同馬は前年の牡馬三冠レースで、3着、2着、3着とあと一歩及ばなかった。さらにその後、有馬記念で2着、天皇賞・春も4着と惜敗。「GIでは少し足りない」という評価が定着しかけたところ、GI6戦目となる宝塚記念で見事に戴冠を遂げた。
2001年の勝ち馬メイショウドトウもそうだ。2000年の宝塚記念から、天皇賞・秋(東京・芝2000m)、ジャパンC(東京・芝2400m)、有馬記念、そして2001年の天皇賞・春と、同馬はGI5戦連続2着。すべて、宿敵テイエムオペラオーの後塵を拝した。だが、同馬もGI6戦目にして、ついに"打倒テイエムオペラオー"を果たした。それが、2001年の宝塚記念だった。
2001年の宝塚記念は、メイショウドトウ(赤帽)が宿敵テイエムオペラオ―(青帽)を退けて初の戴冠を遂げた photo by Kyodo Newsこの記事に関連する写真を見る この2頭ほどドラマチックではないものの、ほかにもマーベラスサンデー(1997年)やダンツフレーム(2002年)、アーネストリー(2011年)、ミッキーロケット(2018年)など、GIタイトルに恵まれなかった馬たちの多くが宝塚記念で激走。悲願のGI初制覇を成し遂げている。
つまり、宝塚記念というのは、GI戦線で勝ちきれなかったり、くすぶっていたりしていた馬たちが"生涯に一度"とも思えるような激走を見せる舞台なのである。その歴史的な事例にならえば、今年も面白そうな馬が2頭いる。
ディープボンド(牡7歳)とソールオリエンス(牡4歳)である。
ディープボンドは、すでにGI参戦15戦を数える。しかし、天皇賞・春で3回、有馬記念で1回と2着は計4回あるものの、一度もGIを勝ったことがない。宝塚記念で"悲願達成"というドラマ性を考えれば、この馬が最も魅力的な存在に映る。
一方、ソールオリエンスは昨年の皐月賞馬。そうなると"悲願達成"というキーワードから外れるが、GI戦線で勝ちきれず、くすぶった状態が続いているという点においては、過去の激走馬に少し似ている。今や「弱い」とされる現4歳世代の象徴のように言われているが、大舞台でリベンジを果たすエネルギーは、この馬にもあるはずだ。
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