アンカツ選定、衝撃の「3歳牡馬番付」 群雄割拠のクラシックをどう読み解いたのか? (3ページ目)

  • 新山藍朗●取材・構成 text by Niiyama Airo

 確かに不器用で、サッと動けないし、終(しま)いも伸びそうで伸びないといった弱点もある。だが、それには理由がある。ひと言で言って、馬がまだ子どもだから。

 それゆえ、騎手のゴーサインにもスッと反応できず、それによって、勝てるレースを取りこぼしてしまっている。それでも、必ず2着はキープしている。これが、この馬の素質の高さだろう。

 あてにできないタイプではあるが、これからの成長度によっては、急激に強くなる可能性を秘めている。そこが、この馬の魅力。折り合いには不安がなく、距離もこなせるはずで、皐月賞よりダービーで真価を発揮するのではないか、と思っている。

関脇:ジャスティンミラノ(牡3歳)
(父キズナ/戦績:2戦2勝)

 2戦2勝と、この馬も負けてないのが強み。キャリアは浅いが、その分、伸びしろは大きい。その未知の可能性も評価して、この馬を3番手の関脇とする。

 前走のGIII共同通信杯(2月11日/東京・芝1800m)では、強いレースを見せた。道中2番手を追走し、直線に入って追い出されると、あっという間に逃げ馬をかわして、最後は2着に1馬身半差をつけて快勝。味な競馬というか、キャリア2戦目の馬にしては、大人びた競馬だったように思う。

 しかも、2着に負かしたのが、朝日杯FSを勝って、JRA賞の最優秀2歳牡馬に選ばれたジャンタルマンタル(牡3歳)。デビュー2戦目でこの相手に、あれほど堂々とした競馬をして勝ったことの意味は大きい。

 時計は平凡だったかもしれないが、この馬の勝ちっぷりはその不足を十分に補えるものだった。特に上がり32秒6というタイムは立派。前で運んでいた馬に、これだけの上がりを使われては後続もなす術がない。

 キズナ産駒で、2戦とも東京を使われてきたことを考えると、この馬も狙いはダービーか。3歳牡馬のなかでは、この馬が最も不気味な存在だ。

小結:ジャンタルマンタル(牡3歳)
(父パレスマリス/戦績:4戦3勝、2着1回)

 朝日杯FSまでは、デビューから無傷の3連勝。同レースでこの馬を実際に見たとき、「すごくいい馬」「この馬が勝って当然」と思った。馬格があって、全体のバランスがいい。ここまで「いい」と感じさせてくれる馬は滅多にいない。

 騎手は"馬のつくりに惚れる"というところがある。自分も現役時代、馬を見て惚れ込んで、その馬を選ばせてもらったことがあった。しかし、それで本当に走るのか、というとそういうわけではない。まったく走らない、ということもよくある。

 でも、この馬は違う。朝日杯FSのときも全然本気を出して走っていないのに、あっさり勝った。

 それで、同馬への期待を一段と膨らませたのだが、前走の共同通信杯ではコロッと負けてしまった。それも、キャリア2戦目の馬に完敗である。

 それによって、世間的な評価は落ちてしまったが、自分が見たところ、あの負けは勝ちにいっての敗戦ではなかったように思う。馬に"競馬を教える"という騎乗だったように感じた。つまり、先々のことを考えての敗戦で、そこまで悲観することではない。皐月賞も、ダービーも、きっといい競馬を見せてくれるのではないだろうか。

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