凱旋門賞馬の全弟シンエンペラー デビューへの準備過程で見せる世界的良血馬の底知れなさ
厳選!2歳馬情報局(2023年版)
第19回:シンエンペラー
世界中のホースマンが憧れるレースとして知られるGI凱旋門賞(フランス・芝2400m)。今年は10月1日に行なわれ、フランスダービー馬のエースインパクトが豪快な追い込みを見せて快勝した。
実は、日本でデビューを控えた2歳馬のなかに、その凱旋門賞を勝った兄を持つ良血馬がいる。栗東トレセンの矢作芳人厩舎に所属するシンエンペラー(牡2歳/父シユーニ)である。
2020年の凱旋門賞を制したシンエンペラーの兄、ソットサスこの記事に関連する写真を見る 凱旋門賞馬である同馬の兄というのは、ソットサス。2019年にGIフランスダービー(フランス・芝2100m)を制覇して、同年の凱旋門賞でも3着と健闘している。
そして翌2020年、春にGIガネー賞(フランス・芝2100m)を勝って2つ目のGIタイトルを獲得すると、秋には世界最高峰の舞台で躍動。不良馬場のなか、道中インコースの3番手を進んで、直線でライバルたちとの叩き合いを制して、凱旋門賞での戴冠を遂げた。
この兄とまったく同じ血筋となる弟、シンエンペラーはフランスで生まれ、2022年に現地のセールで取引された。落札額は210万ユーロ。当時のレートで、およそ2億8000万円超という高値だった。
同馬はすでに矢作厩舎に入厩し、デビューに向けて調整を重ねている。現場のスタッフはこの血統馬についてどう見ているのか。関西競馬専門紙のトラックマンが話を聞いてきた。
「シンエンペラーについて、スタッフは『乗り味が非常によく、心肺機能も優れている』と高評価でした。コントロールが効く気性で、『長い距離でも持ちそう』とも話していました。
良血馬ゆえ注目度が高く、陣営は『クラシックを目指さないといけない馬』ときっぱり。当然、同馬への期待は大きいです」
陣営としては、すでに一定の手応え得ているようだが、先述のトラックマンによれば、さらなる成長を見込んでいるという。
「気性的にまだ幼いところがあり、『走りに集中できていない』とスタッフ。陣営は、もう少し前進気勢が出てくることを望んでいるみたいです。
ただそれは、『馬がまだ調教で追い込まれておらず、余裕がありすぎる』といったことも影響しているようです。ある意味、能力が高すぎるゆえの、課題と言えるかもしれません」
文字どおり世界的な良血馬であるシンエンペラー。凱旋門賞馬の全兄を彷彿とさせるような走りを見せてくれるのか。デビューを迎える日が楽しみである。