安田記念でシュネルマイスターは新たな「マイル王」になれるのか。気になる点が2つある (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo
  • photo by Kyodo News

 ただ、気になるのは前走、海外GIのドバイターフ(3月26日/UAE・芝1800m)での敗戦だ。

 日本馬のパンサラッサが勝利し(1着同着)、今回の安田記念にも出走するヴァンドギャルド(牡6歳)が3着に入ったレースで、人気、実績ともにこの2頭をはるかに上回るシュネルマイスターは、8着と惨敗を喫した。

 その敗戦について、鞍上のクリストフ・ルメール騎手は「ドバイではテンションが上がっていた」と語っている。確かに、ふだんはきちんと折り合うこの馬が、ドバイではレース前半から折り合いを欠いていた。

 それゆえ、この一戦については「度外視していい」と競馬専門紙記者は言う。

「初の海外遠征で、雰囲気にのまれてしまったようですね。レース前のテンションがいつもとは明らかに違っていたし、レースでは苦しがるような素振りまで見せていましたから。初の海外遠征で、馬が入れ込んで力が出せないことはよくあること。その意味では、シュネルマイスターの前走はノーカウントでいいと思いますよ」

 気になることはもうひとつある。同馬は昨年、NHKマイルCで戴冠を遂げて、GII毎日王冠(東京・芝1800m)でも古馬を一蹴しているが、それぞれタイム差なしの辛勝。最後の最後で少しだけかわして勝った、という印象がある。

 これは、この馬自身の個性なのか、それとも能力的な限界を示すものなのか? 

 この点について、前出の専門紙記者はこう分析する。

「昨年のシュネルマイスターは、まだ完成途上の3歳馬。馬体が仕上げきれていませんでした。いわゆる"ゆるい"状態。そのため、ゴーサインが出てからの反応が鈍かった。少ししか勝たないという印象があるのは、その鈍さのため。能力的な限界などではありません。

 それに、馬体が緩くて、反応が鈍くても、GIを勝ったり、グランアレグリアと接戦を演じたりしているわけですから。完成したら、どれだけすごい馬になるのかと期待は膨らむ一方です」

 これまでも強かったが、その能力にはさらに奥があり、もう一段か二段上のギアを秘めている可能性もあるという。

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