渡仏した小林智調教師が語る
「フランス競馬界の日本へのリスペクト」 (6ページ目)
いままでいろいろな人にお世話になって僕はここまでこられた。なので、今は若い人が新しいものを勉強したくてフランスに来たときに、教えてあげるのが僕の使命だと思っています。今まで受けた恩は、返さないといけない。
聞いた話なのですが、受けた人に恩を返すのが「恩返し」ですが、いただいた恩を、誰か別の人に返す、「恩送り」という美しい言葉が昔の日本にはあったそうです。今の僕は、「恩送り」もしなくてはいけないと感じています。
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学生時代のバイト先で牧場との"縁"が見つかったり、研修旅行でたまたま道を聞いたのが超有名厩舎の厩務員だったり、フランスの重鎮を紹介してもらえたり、ちょうど武豊ジョッキーがフランスにいたりと、小林調教師のキャリアには、幸運な縁が積み重なっている。
しかし、"偶然"に見える縁を引き寄せたのは、小林調教師自身の強い意志と努力だ。牧場時代に海外研修に行かせてもらえたのも、キーパーソンの紹介などサポートが受けられたのも、彼の懸命な働きぶりややる気、熱意が、「この人のために何かしてあげよう」という周りの気持ちを動かした。
小林調教師は、そんな自分のキャリアを軽やかに明るい笑顔で話す。
「好きなことをやっているので、苦労には感じないんです」
まだ、挑戦は始まったばかり。いずれ小林調教師に鍛えられた馬が、凱旋門賞に出走し、制する日を楽しみに待ちたい。
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