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渡仏した小林智調教師が語る
「フランス競馬界の日本へのリスペクト」 (4ページ目)

  • 小川由紀子●文・写真 text & photo by Ogawa Yukiko

――調教に関してもトレーナーとして、ご自身の成長を感じていらっしゃると思いますが。

小林 それは感じています。まったく満足はしていませんが。(フランスのトップトレーナー)アンドレ・ファーブル厩舎のレースを見ていると、どうしたらああいう馬になるのか、といつも思います。3、4コーナーからおっつけていて、どう見ても手応えが怪しいのに、最後まで伸びて勝ったりするんです。調教のときに負荷のかけ方をきっちりしているんでしょうね。

 サトノダイヤモンドが4着だった今年のフォワ賞で2着だったクロスオブスターズも、休み明けだったのにしっかり(調教を)やっている。そして、しっかりやっているけれど、さらにその先も見据えた仕上げ方をしてきている。中途半端ではないんですよね。すごいです。ファーブル厩舎は。

――そうしたノウハウを培っていくには、どうしたら?

小林 試行錯誤しかないでしょうね。やってみて、うまくいかなかったらちょっと変えてみて......というのを繰り返さないと。ただ、今の時点で「正解を見つけた!」と思えることはないです、まだひとつも......(ここで長考)。

 この業界、「俺はわかっている」という人は大勢います。けれど自分は「僕はわかっている」とは死ぬまで言えないと思います。それほど難しいです。よく観察しなきゃいけないし。この業界に限らず、どの仕事でもそうじゃないかとは思いますが、特に相手がしゃべれないですから、気をつけて見ていないといけないんですね。

――これまで見てきたジョッキーの中で印象的だった人はいましたか?

小林 豊さんはやはりすごいです。豊さんのすごいところは、あのお年齢(現在48歳)でもまだうまくなること。乗り方が変わるんです。最近また変わりましたよね。

 あの実績で「俺はもう完璧」と言ってもおかしくない域にきているのに、まだ努力を続けてうまくなろうとしている。あんな人はいないでしょうね。頭の中が超一流のスポーツマンなんだと思います。

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