渡仏した小林智調教師が語る
「フランス競馬界の日本へのリスペクト」 (3ページ目)
「熱意のある若者を応援したい」という小林調教師――フランス競馬界のしきたり、といった部分はどうですか?
小林 レース場に来たときに何か特別な作法やルールがあるわけではないですが、それは感じていくものだと思います。たとえば服装にしても、決まりがあるわけではないですが、この世界で築かれてきたしきたりへのリスペクトは必要だと思います。
――それ以外に、この世界でやっていくうえで必要な努力はありますか?
小林 周りと上手にやるのは大事なことですね。どこの世界でもそうですが、ツンツンしていたら嫌がられる。でも、僕は根がこういう(明るい)人間なので(笑)。
――ご自身で厩舎を運営されるとなると、調教師としての仕事だけでなく「会社経営」の部分も必要となります。それも大変な業務なのでは? 特にフランスではどの業界も雇用問題は難しいと聞きます。
小林 たしかに、人事のマネジメントなど仕事はたくさんありますね。うちではいま6人雇っています。フランス人を雇うのは、なかなか難しいです。会計面だけは会計士さんにお願いしていますが。とにかく社会保障費など払うものが多すぎて儲からないですね(笑)。
――もっとも難しいと言われる、馬の仕入れについては?
小林 やはり実績を積むことなんだと思います。今日使った馬(マティクス)の馬主さんは牧場をやっていて種牡馬も持っている方なのですが、僕のところにいた吉田照哉社長の馬で、マティクスと似た血統の馬がGIで3着に入ったんです。その後、その方のマネジャーが来て、「うちの馬主が馬を入れたいと言っている」と。
結果を出すことは大事です。厩舎の評判は結果でしかないので。いくら丁寧に馬のケアをしてあげたとしても、走らないと意味がない。それから、僕はお預かりするときに感じた印象を正直に馬主さんに言うことにしています。「やってみるけれど、ダメそうだったら言うので」と。
預託料はもちろん魅力ですが、「大丈夫」と言って預かって、1年経って結果が出ないからダメだった、と言うようでは信用を得られないので。それに、結構早い段階で見極めはつくものですから。
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