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【競馬】蛯名騎手が語る「激変イスラボニータに勝機あり」 (2ページ目)

  • 新山藍朗●構成 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports

 もちろん課題はあった。もともと性格的に前向きだし、当時はまだ子どもっぽくて、仕掛けると、夢中になって一気に行ってしまうようなところがあった。だから、そこをどうコントロールするかがポイントで、そこさえクリアできれば、かなりのレベルの馬になるな、という手応えはあった。

 新潟2歳S以降は、その点に気を使って、この馬と付き合ってきた。前向きなところはいい面でもあるから、そこは消さずに、いろいろなことを少しずつ教えていった。そして、こちらの意図どおりにどんな競馬でもできるのがイスラボニータのよさなんだけど、3戦目のいちょうS(2013年10月19日/東京・芝1800m)あたりからは、少しずつ無駄な動きが減って、こちらから無理にやらせなくても、普通の競馬ができるようになった。僕らの期待どおりに成長して、ひとつひとつ課題をクリアしていってくれた。

 ただ正直なところ、そのあとに重賞の東スポ杯を勝っても、翌年のクラシックで勝ち負けを意識するほどではなかった。これから、さらに強い相手と戦った場合、どこまでやれるのか、やや半信半疑だった。前述したとおり、イスラボニータはどんな競馬にも対応できて、まだ2歳馬であるにもかかわらず、レースでいろいろなことができた。それが、この馬の強みではあったのだけれども、逆にこの時期の2歳馬にしては、完成され過ぎていると感じたからだ。

 クラシックを狙うような2歳馬は、そこから年を越して、春を迎えるまでの成長度合いというものが、とても重要になる。その点、イスラボニータはあまりにも完成し過ぎていたから、その後の伸びしろがあるのか、という点で心配があった。

 しかし、そんな不安を一掃してくれたのが、年明け初戦の共同通信杯だった。

 レースでは、前半は行きたがって、ずっと折り合いに苦労していた。しかも、他馬より1kg重い斤量57kgを背負っていたから、道中は最後まで(スタミナが)持ってくれるのか、やきもきしていた。ちなみに、3歳のこの時期のプラス1kgは、古馬なら2kgか3kgに相当する負担。それだけのハンデがあることを考えたら、なおさら不安になったけれども、終わってみれば、2着に1馬身4分の1差をつけての完勝だった。それも、評判馬のベルキャニオン(牡3歳)を退けた。

 さらに、僕自身もそうだけど、レースを見ていた誰もが、着差以上の強さを感じたのではないだろうか。だからレース後、記者の方々に感想を聞かれて、「今日は100点」と言った。勝った馬に対しても、滅多に満点評価を与えることはないけれど、あのときは、その言葉が偽らざる気持ちだった。そして、この結果を受けて「これならクラシックでも戦える」と思った。

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