【競馬】
日本競馬に適した繁殖牝馬を見出した外国人牧場長の「慧眼」 (2ページ目)
1年で20頭ほどの生産規模しかないパカパカファームの馬が、年間に何百頭と生産される大牧場の、それも牧場期待の有力馬を破った。無論、新馬戦だけで競走馬の能力をすべてはかることはできないが、この結果は、パカパカファームの現場を大いに沸かせた。
特にクラリティシチーは、その母タイキクラリティに限らず、祖母のタイキダイヤもパカパカファームで繋養されていて、代表のスウィーニィ氏が大切にしてきた血統のひとつだ。その分、牧場の期待は大きく、同牧場が輩出した日本ダービー馬、ディープブリランテに続く活躍が望まれている。
さて、スウィーニィ氏が大切にする血統と言えば、パカパカファームの名を知らしめたディープブリランテの血筋こそ、その最たるものだ。彼とこの血統とのエピソードは、2001年にまでさかのぼる。
パカパカファームが開場したその年、スウィーニィ氏は繁殖牝馬を増やそうと世界中を駆け回っていた。海外で埋もれている「日本向きの血」を探し続けていたのだ。そしてその中で、ある一族に行きつく。
「マニックサンデーという牝馬が、2000年の4歳牝馬特別(GⅡ)を制したときから、バブルカンパニーというフランス産の牝馬からなる血統に興味を抱いていました。というのも、マニックサンデー(母バブルプロスペクター)はバブルカンパニーの孫にあたるのですが、バブルカンパニーの仔には天皇賞・秋などGIを2勝したバブルガムフェローがいたからです。マニックサンデーとバブルガムフェローのレース成績はもちろんのこと、馬体やレースぶりを見るにつけ、バブルカンパニーに由来するこの一族は、日本の競馬に合っているのではないか、と考えました」
来日当初から「日本の競馬に適性のある馬」を追い続けてきたスウィーニィ氏。バブルカンパニーから派生する一族は、自身が牧場を開く前から目をつけていた血統だった。
「さらにもうひとつ、種牡馬サンデーサイレンスとの相性が良いことも、この一族に好印象を持った要因でした。マニックサンデーも、バブルガムフェローも、父はサンデーサイレンス。ですから、バブルカンパニーのファミリーに、サンデーサイレンスの血をかけ合わせれば、きっと素晴らしい馬が生まれるのではないかと思ったのです」
時はまさしくサンデーサイレンス全盛。日本ではサンデーサイレンスの産駒が軒並みGIを制しており、逆に言えば、サンデーサイレンスの血に合う繁殖牝馬を見つけられるかどうかが、名馬生産のカギとも言える時代だった。この一族にはその可能性があると、スウィーニィ氏は見抜いたのだ。
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