畑岡奈紗vs渋野日向子。メジャーで輝く
若き2人の明暗を分けたもの

  • 杉山茂樹●取材・文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

  しゃんしゃんごうごうと木々の葉が擦れ合う音が、この日もコース全体を支配していた。ピンのフラッグも前日同様、千切れそうに靡(なび)いている。青山高原と呼ばれる山の稜線に目をやれば、白い発電用の風車が林立し、自然エネルギーの力を誇示するかのように、ぐるぐると勢いよく回っていた。

 日本女子オープン最終日――。

 スタートホールは1番、パー5。渋野日向子はここで、過去3日間で2度バーディーを奪っている。通算15アンダーで首位に並ぶ最終組の2人(畑岡奈紗、大里桃子)を6打差で追いかける彼女にとって、是が非でも獲りたいホールだった。

 しかし、バーディーパットをピンの手前、およそ5mに残してしまう。

 連日、強風とカンカン照りが続けば、必然グリーンは硬く、速くなる。しかも最終日のピンは、広いグリーンの最深部、奥の奥に切られた。設定は厳しくなっていた。渋野は、第3打をいいところから打ちながら、突っ込み切れなかったのだ。

 結局、パー発進。その姿は、普通の選手なら「惜しい」で済むも、大逆転優勝を狙う選手には物足りないプレーに映る。

 その2組あとを回る、対する畑岡は、対照的に第3打で突っ込むことに成功。ピン左2mにつけ、いきなりチャンスを迎えた。これが決まれば、渋野とは7打差。渋野に優勝のチャンスはほぼなくなる。

 ところが、注目の一打を畑岡は外してしまう。

 そして、畑岡は3番をボギー。続く4番も、ティーショットをミスして連続ボギーとした。パープレーを続けていた渋野とは、4打差に急接近した。ゲームは面白くなったかに見えた。

 渋野はその時、6番にいた。2日目、イーグル逃しのバーディーを奪ったロングホールである。そこで、セカンドを縦長のグリーン手前まで運ぶ。ピンの位置は奥で、見た目で30~40ヤードほど。大きなチャンスを迎えていた。

 しかしこの上りのアプローチを、渋野はだいぶショートしてしまう。スピンがかかりボールは途中で失速する。またも、突っ込み切れなかったのだ。

 前半に2つあるロングホールで、渋野はいずれもパーに終わった。これでは追撃モードは上がらない。

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