「ワールドカップ売却計画」は断念も残る火種 FIFAインファンティーノ会長体制に何が起きているのか (3ページ目)
【政治や巨大資本との距離に不安】
数字だけを見れば、極めて魅力的なビジネスで、この計画を支持する声もあった。サッカー市場は拡大を続けている。新たな投資を呼び込めば、加盟協会への支援も増やせ、発展途上国への還元もできる。インファンティーノが考えたのも、おそらくそうした未来だったのだろう。「FIFAをより強くするための改革」だと。
しかし、問題はお金ではなかった。誰がその資産を支配するのか、だった。さらに、計画に関わる人物の名前が報じられると、疑念は一気に広がる。
FFE設立に深く関与するとされた投資会社の代表はジョシュア・クシュナー。ドナルド・トランプ大統領の娘イヴァンカの夫、ジャレッド・クシュナーの実弟である。加えて、アメリカの大手金融機関JPモルガンが金融面で関与するとされ、2034年ワールドカップ開催国サウジアラビアの政府系ファンドPIFも、資本参加に前向きだと報じられた。それらが不正を意味するわけではないが、政治と巨大資本との距離が急速に縮まったように見えたことが、多くの関係者に不安を抱かせた。
この構想を実現するためには、211ある加盟協会の過半数の支持とFIFA理事会の承認が必要だった。そこでFIFA執行部は各協会に対し、支持を求める文書を送る。そこには従来の支援金とは別に、各協会へ数千万ドル規模の特別支援を行なう可能性も記されていた。規模の小さい協会にとって、それは決して無視できる金額ではなかった。これは加盟協会の理解を得るための文書なのか、それとも賛成票を集めるための材料なのかという議論が起き始める。サッカー界の空気は一気に張り詰めた。
FFEをめぐる議論は、サッカーという競技の未来を誰が決めるのかという問題だったのである。
最初に動いたのはヨーロッパだった。UEFAは緊急会議を開き、55の加盟協会がFFE構想を支持しないことで一致。声明のなかで最も強い印象を残したのは「FIFAの資産は加盟協会のものであり、FIFA会長個人のものではない」という言葉だった。「必要であればFIFA主催大会のボイコットも辞さない」という強硬な姿勢まで示した。
ヨーロッパだけでは終わらなかった。北中米のCONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)も、「FIFAは民間企業ではない」と異例の声明を発表する。AFC(アジアサッカー連盟)からも、「世界サッカーの連帯を損なう」と懸念が示された。これまでインファンティーノを支えてきた地域からも、「説明が足りない」「拙速すぎる」という声が上がり始める。
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