「ワールドカップ売却計画」は断念も残る火種 FIFAインファンティーノ会長体制に何が起きているのか (2ページ目)
【契機となったカタール大会】
2022年のカタールワールドカップで、FIFAは史上最高の商業的成功を収めたが、その一方で、大会をめぐる議論がピッチの外で続いていた。スタジアム建設に従事した外国人労働者の問題や、表現の自由や人権をめぐってカタールが開催国として本当にふさわしかったのかという議論だ。
だが、インファンティーノは人権問題を批判するヨーロッパ諸国に対し、逆に「ダブルスタンダードだ」と強く反論した。さらに議論を呼んだのが、インファンティーノが生活の拠点をカタールのドーハへ移していたことだった。もちろん、会長がどこに住むかは個人の自由である。しかし、開催国との距離があまりにも近く見えたことは、多くの人に「FIFAは中立であり続けられるのか」という疑問を抱かせた。それは「FIFAは誰のために存在する組織なのか」という根本的な問いが、少しずつ語られるようになる契機となった。
そして2026年のワールドカップ。それはFIFAにとって長年描いてきた夢だった。より多くの国が参加し、より多くの試合を行ない、より高く放映権を売り、より多くのスポンサーを集める。その先にあったのは、収益規模のさらなる拡大だった。
インファンティーノは大会期間中、ほぼ毎日のように北米各地を飛び回っていた。同じ日に2試合を視察することも珍しくなかった。そして大会が終わった直後、ひとつの文書がFIFA内部からメディアに流出する。タイトルは「FIFA Forward Enterprise」、略称FFEだ。
最初、その名称を見ても、何を意味するのか理解できた人はほとんどいなかった。しかし、内容が明らかになるにつれてサッカー界は騒然となる。それは新しい会社を作るというだけの話ではなかった。ワールドカップという世界サッカー最大の資産そのものを、新会社へ移そうという構想だったのである。
ワールドカップをはじめとするFIFA主催大会のテレビ放映権、スポンサー契約、マーケティングなどのあらゆる権利をひとつの会社が管理する。推定企業価値は約200億ドル(約3兆1000億円)。さらに、その株式の約20%を民間投資家へ売却する構想まで含まれていた。もし実現すれば、FIFAは40億ドルを超える資金を一度に調達できる。
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