【欧州サッカー】ブラジルで珍しい「魔術」を使わないクラッキ カカのドリブルは「神から授かった」天性のもの (3ページ目)
【引退後は「カカ二世」発掘へ】
ちなみに2009年1月、ミランとマンチェスター・シティの間で、カカの移籍が合意に至っていた。しかし、本人が拒否。「私はミランに忠誠を誓う」のひと言に、世界中のミラニスタが狂喜乱舞した。
サンパウロ→ミラン→レアル・マドリード→ミランというキャリアは、まさしくエリートコース。メディアの監視も厳しく、多少のスキャンダルが「作られても」不思議ではない環境だ。なかでもレアル・マドリードは特異な猜疑心と好奇心に囲まれている。
財政難に苦しむミランを助ける形で泣く泣くラ・リーガに渡ったカカは、負傷の影響もあって活躍できなかった。期待が大きかったぶん、スケープゴートにされかねない。
ただ、カカにまつわる妙な噂は一度も耳にしなかった。現在ほどSNSが我が物顔でのし歩いていなかった時代とはいえ、超絶真面目な男に対して「作り話」は気が引けたのか。「火のないところに煙を立てまくっていた」ゴシップ系のメディアも、カカには一切攻撃しなかった。
彼が優等生を意識的に演じていれば、もちろんメディアは気づく。「羊の仮面を引きはがす」ことは彼らの得意技だ。しかし、カカは常日頃から周囲を気遣い、他責に逃げもしなかった。彼を批判する声を聞いたことはないし、彼も誰ひとり批判しない。
まさしく「好人物」だ。
2017年にユニフォームを脱いだあと、カカはエージェントとして忙しい毎日を過ごしている。人のいい彼がマネジメントする選手は幸せ者だ。常に寄り添ってくれるだろう。ただその反面、騙されはしないかと心配になる。移籍市場は生き馬の目を抜く修羅場だけに、人がいいだけでは通用しない。
カカの人間性をふまえると、トップクラブの監督を務めるには優しすぎるように思える。トップチームではなく若年層のコーチが適しているのではないだろうか。2022年5月にはブラジルサッカー連盟のA級ライセンスも取得している。
自らの手で後継者を育てる夢に向かって──。攻撃力に秀で、卓越した状況判断を携え、なおかつ周りを気遣える「カカ二世」が、まもなく現れるに違いない。
著者プロフィール

粕谷秀樹 (かすや・ひでき)
1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年
、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、 海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム 、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出 版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン 社)など多数。
【図】FIFAワールドカップ2026出場国 フォーメーション&メンバー
3 / 3






















