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【欧州サッカー】ブラジルで珍しい「魔術」を使わないクラッキ カカのドリブルは「神から授かった」天性のもの (2ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Hideki Kasuya

【ミラニスタに愛された男】

 ペレ、ロベルト・リベリーノ、ジーコ、ロマーリオ、ロナウジーニョ......。ブラジル代表は世代ごとに、多くの「魔術師」を世に送り出してきた。

 ロベルト・カルロスの左足も「異能」であり、彼のキックは漫画でも描けないような軌道で世界中を驚かせた。ジュニーニョ・ペルナンブカーノの右足も尋常ではなく、曲がりながら落ちてブレるFKにGKが反応できるはずはなかった。

 彼ら歴代の名手(クラッキ)に対し、カカは魔術を使わなかった。オーソドックスなタイプにカテゴライズされる、といって差し支えない。しかし、カカのプレーは突き抜けていた。

 特にドリブルである。トップスピードでも意のままにボールをコントロールし、タックルする隙さえ与えない。ここに急速な緩急をつけるのだ。下半身に多大な負担をかける動きだが、カカは涼しい顔でやってのけていた。

「ドリブルする姿が美しいだけではなく、腕の使い方も見事というしかない。身体のバランスを整えたり、相手をブロックしたり......。トレーニングで身につけた動きではないな。すべてに無駄がない。天性のものだよ」

 2006-07シーズンのチャンピオンズリーグで対戦したマンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督も、カカのドリブルには舌を巻いた。この一戦でカカは、リオ・ファーディナンドをフィジカルで圧倒し、見事なゴールを決めている。

 また、状況判断も素晴らしい。相手DFラインの背後をつくスルーパスで多くのチャンスを創出した。決定力にも秀でており、ミドルシュートやワンタッチシュートでチームに貢献している。

 2006-07シーズンのチャンピオンズリーグでは10ゴールを挙げて得点王を獲得。ミランにビッグイヤーをもたらすとともに、2007年にはバロンドール、FIFA最優秀選手にも選出されている。

 ミランをよく知るイタリア人の識者やジャーナリストも、自国の英雄ジャンニ・リベラに次ぐ「トレクァルティスタ」(トップ下)としてカカの名前を挙げていた。非の打ちどころがない選手なのである。

「決して傲慢にならず、常にフォア・ザ・チームを心がけていた。適性は2列目中央だが、戦術理解度が高かったためにサイドやセカンドトップでも起用された。それでも彼は嫌な顔ひとつせず、黙々とタスクをこなしていた」

 ミランで同じ釜の飯を食ったカルロ・アンチェロッティ監督も絶賛している。

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