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【欧州サッカー】GKオリバー・カーンの「飛び込む勇気」は持って生まれた才能 恐怖心を克服する方法は? (3ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【体が勝手に動く反復トレーニング】

 GKというポジションには欠かせない「勇気」。技術とは違った角度で、南氏がさらに話を続ける。

「実はGKにとって、この『勇気』というのは持っている技術を使いこなすうえでも極めて重要な要素なのです。しかしながら、これは鍛えればすぐに身につくというものではありません。

 そもそも、相手がシュートしようとする瞬間を目の当たりにすれば、人間の本能としては顔を背けてしまうものです。不意にボールが飛んでくるのが視界に入れば、思わず避けるか、手や足でボールを止めて体や顔を守るのが、普通の反射的な動作ですよね。

 でもGKはいざという時に、顔を背けることなく、体ごとボールに飛び込まなければならないシーンがあります。そんな時、飛び込むことを怖がるGKに『怖がらないで飛び込め』と言っても、そう簡単に恐怖心を取り除くことはできません。

 そういう意味でも、GKの飛び込む勇気というのは、持って生まれた資質によるところが大きいと言えるでしょう。

 僕自身もそうでしたが、その恐怖心をトレーニングによって少しでも取り除くためには、正しいフォームを身につけることが大事だと思います。こういった状況で飛び込む場合の顔や腕の位置、体の向きなど、その瞬間、反射的に習得したフォームで飛び込むオートマチックな動作にして慣らしてしまうことで、恐怖を感じないように持っていくのがひとつの方法だと思います。

 そういった反射的な動作を、反復トレーニングによって体得し、体が勝手に動くというレベルにまで上げていく。そうすると試合でも恐怖を感じることなく、飛び込める『勇気』が自分のなかに生まれてくると思います」

 ゴールを守るために前に出て、シュートを止めるために飛び込む勇気。あるいは、至近距離でもボールから目を離さない勇気。華やかなシュートストップのテクニックとは別に、GKにはさまざまな能力が要求される。

 試合中に手を使える唯一のポジションで、フィールドプレーヤーとは異なるユニフォームを身にまとうGKは、特にヨーロッパでは子どもたちの憧れの存在であり、花形のポジションとされる。その奥深きGKの世界を少しでも理解できれば、きっとサッカーというスポーツの見え方も変わってくるはずだ。

 2026年ワールドカップ。カーンに続くGKゴールデンボーラーが誕生することを期待したい。

<了>


【profile】
南雄太(みなみ・ゆうた)
1979年9月30日生まれ、東京都杉並区出身。静岡学園時代に高校選手権で優勝し、1998年に柏レイソルへ加入。柏の守護神として長年ゴールを守り続け、2010年以降はロアッソ熊本→横浜FC→大宮アルディージャと渡り歩いて2023年に現役を引退。1997年と1999年のワールドユースに出場し、2001年にはA代表にも選出。現在は解説業のかたわら、横浜FCのサッカースクールや流通経済大柏高、FCグラシオン東葛でGKコーチを務めている。ポジション=GK。身長185cm。

著者プロフィール

  • 中山 淳

    中山 淳 (なかやま・あつし)

    1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)

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