メッシを躍動させた不世出のMF、最後の雄姿 ブスケツは「センターハーフの概念を変えた」 (2ページ目)
【グアルディオラは見抜いていた】
プレーするブスケツの立ち姿は、確かに美しくはなかった。ボール扱いはうまいのだが、大柄な身体を持て余しているように見えた。背中を丸めた猫背で、少し鈍重そうに映った。
司令塔の選手と言えば、背筋を凜と伸ばし、腰を低く沈ませ、膝を少し折って胸を張り出させ、視線は辺りを見回す。その"型"が、美しさのステレオタイプだろう。肘は脇につけ、手は指揮者のような構えでバランスを取り、インサイドパスでは身体のひねりを使う。体幹を軸にコマのように回って力を伝えるイメージだ。
バルサで言えば、ジョゼップ・グアルディオラがその原型だった。
ブスケツがいたバルサBには、マルク・クロサスというMFがいた。クロサスは立ち姿が優雅で、グアルディオラとボールの持ち方やパスの出し方が酷似していた。もはやコピーのようだった。
当時、バルサBの監督はグアルディオラで、筆者は嬉々として質問したことを覚えている。
――クロサスはあなたに似て、楽しみなプレーメーカーです!
しかし、グアルディオラは淡々と言った。
「自分と似たような選手は要らない。自分と同じだったら、今のサッカーでは通用しないよ。立ち姿など関係ない。たとえばシャビやイニエスタは私にはない得点感覚を持っている。バルサのようなクラブでは、プレーを常に革新させる選手が必要だ」
グアルディオラは、ブスケツの「ボールを受けて、弾く」という動きの精度と速度を評価していた。プレッシング戦術が全盛になるなか、ビルドアップでは限られた時間と空間しか残されていない。抜群のポジション感覚で、次のプレーが展開できる能力がブスケツにはあった。パス出しの速さは他の追随を許さず、優れたビジョンとスキルのおかげで、周りのプレーを輝かせた。
グアルディオラは、大柄で猫背なMFの力を見抜いていた。だからこそ2008年、4部でのプレー経験しかなかったブスケツを1部の試合の先発で使った。周囲の反対を押しきって、だ。
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