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サッカー日本代表との対戦が楽しみなブラジル国民 アンチェロッティ就任で代表人気も復活 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【落ち着きを取り戻した選手たち】

 今年5月、この監督問題はやっと決着した。ブラジルの名にふさわしい名将がベンチに座った。数年越しのラブコールの末にイタリア人のカルロ・アンチェロッティが外国人として初めてブラジル代表監督に就いたのだ。

 もちろん、アンチェロッティが来たからと言ってすべてが劇的に変わったわけではない。滑り出しも決していいものではなく、初戦のエクアドル戦は0-0のドロー。過去のブラジル代表監督で、デビュー戦で引き分けた者はひとりもいない。そして本大会の出場権はどうにか手に入れたものの、予選の順位は5位。南米予選で本大会に直接駒を進めることができるのは6チームだったから、ほぼギリギリだ。

 ただ、アンチェロッティが来るまでの5試合ですべて失点していたブラジルが、アンチェロッティ就任後の4試合は失点をたった1に抑えている。

 そして何より変わったのはピッチでの選手のありようだ。以前はまるでピッチで迷子にでもなったかのようだったのが、今ではその表情に自信が感じられる。

 アンチェロッティがブラジルベンチに座ってまずしたのは、選手たちと1対1で話し合うことだった。おかげで今、ロッカールームの空気は目に見えて落ち着いている。選手たちはアンチェロッティのことを「真のプロフェッショナル」「多くのアイデアを持っている」と称賛する。

 ブラジル代表監督はとんでもないプレッシャーにさらされる。勝利への義務、ミスを犯すことへの恐れ、マスコミからの非難、サポーターからの批判......。しかし百戦錬磨のアンチェロッティは、そんなプレッシャーにさらされても泰然自若としている。彼がブラジル人監督よりも優秀かどうか、セレソンに合っているかはまだわからない。しかし、少なくとも彼は選手たちに希望を与えた。落ち着いた監督の姿に誰もが安堵し、だからこそ選手も冷静にサッカーができるようになった。

 サポーターやメディアの反応は概ね良好だ。サポーターは好奇心と期待の入り混じった視線を向け、ブラジルに来た日から彼のことを、親しみをこめて「カルリーニョ」と呼ぶ。メディアはピッチでの動きが組織的になったと評価し、解説者たちもみな、ブラジルは変わったと言う。

 カテナチオの文化を持つアンチェロッティのサッカーは、まずは堅実さを求め、そしてそのあとに華麗さが来る。創造性豊かなサッカー文化を誇ってきたブラジルのアイデンティティの危機になる可能性があるという危惧もあったが、そういう声は思った以上に小さい。

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