【ワールドカップ2026】予選で散ったスターたち(4) クリスティアン・エリクセン(デンマーク) ー 次回大会へと続く北欧の至宝のラストパス
ワールドカップ2026 予選で散ったスターたち
第4回 クリスティアン・エリクセン(デンマーク)
4年に一度の祭典、FIFAワールドカップ。世界中のサッカーファンが熱狂するこの大会には、国を背負って戦うスター選手たちの輝きが不可欠だ。しかし予選の過酷なサバイバルを勝ち抜くことは、どれほどタレントが揃った国であっても容易ではない。
2026年大会で欧州予選の狭き門を突破できなかった国のひとつが、北欧の強豪・デンマークだ。チームの精神的支柱であり、類まれなる司令塔、クリスティアン・エリクセンが本大会のピッチに立つことはなくなった。多くの困難を乗り越えてきた「北欧の至宝」が辿った軌跡を追う。
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ゲームを操る北欧の異才
エリクセンは、2010年からオランダのアヤックスで才能を開花させ、その後プレミアリーグのトッテナムで世界的な評価を確立した。現代サッカーにおいて最も知性を感じさせるミッドフィルダーのひとりだ。34歳となったいまも、戦術を理解して味方の動きを予測し、完璧なラストパスを供給している。
最大の特長は、得点への直感力と、針の穴を通すような高精度なパスだろう。正確無比なミドルシュートと、フリーキックやコーナーキックで見せる芸術的な弾道は、相手チームにとって常に脅威であり続けてきた。
クラブでの実績も輝かしいものだ。トッテナム時代にはプレミアリーグ屈指のゲームメーカーとして名を馳せ、インテルでのリーグ優勝、その後、ブレントフォード、そしてマンチェスター・ユナイテッドへの移籍と、欧州の第一線で長年活躍を続けている。2025-26シーズンはドイツのヴォルフスブルクに移籍。ひとたびボールを持てば、チャンスを創出する。
死の淵から世界の舞台への帰還
そのサッカー人生には、大きな危機があった。2021年6月に開催されたEURO 2020の試合中に心停止に陥り、生死の境をさまよったのだ。デンマーク代表の初戦、フィンランド戦のピッチ上で突然倒れ、心肺蘇生を受けるシーンを見て、多くのファンが彼のキャリアは終わったのではないかと考えたはずだ。
しかしその後の経緯は、まさに奇跡的な物語として語り継がれている。ICDという医療器具を体内に埋め込み、リハビリを経て、2022年ワールドカップカタール大会でエリクセンはピッチに立ち、グループステージを勝ち抜くことはできなかったものの、3試合すべてに出場した。
代表キャップ数や得点数を見てわかるとおり、デンマーク代表の歴史においてエリクセンは常に中心的な役割を果たし続けてきた。何より、大きな病の後にカタール大会のピッチで彼が見せたあきらめない姿勢は、多くの観客の心を打ち、スポーツのすばらしさを再認識させてくれた。
プレーオフ決勝で敗退
続く今回のワールドカップ・欧州予選において、デンマークはグループCに属し、ギリシャ、スコットランド、ベラルーシと本大会出場権を争った。予選を通じて粘り強く戦ったものの、グループステージは2位で終え、グループ首位の自動出場権にはあと一歩届かなかった。
2026年3月に開催されたプレーオフでは、準決勝で北マケドニアと対戦。ここで4-0と完勝を収めて決勝へと駒を進め、続くチェコとの決勝は死闘となった。3分に先制を許す苦しい展開のなか、72分に同点に追いつき、試合は延長戦へ突入する。延長戦で一度は勝ち越されたものの、劇的な同点ヘディング弾が飛び出し2-2でPK戦へともつれ込んだ。しかし、PK戦で1-3で敗戦。あと一歩のところで本大会への切符を逃すこととなった。
エリクセンのキャリアは次回大会へと続く
34歳のエリクセンは、強豪クラブで研鑽を積み、経験に基づいた冷静な判断力にはさらなる磨きがかかっている。今回の苦い経験を糧に、北欧の司令塔の「完璧なラストパス」を再び国際舞台で見られる瞬間を待ちたい。

