久保建英のサッカー日本代表招集の影響は 不振のレアル・ソシエダの現状をスペイン人記者が探る (3ページ目)
【バレネチェアは活躍を見せているが...】
久保はチームに貢献しようという強い意志をこれまでも常に見せてきたが、今季はその責任の一端を、ラ・レアルの地元サン・セバスティアン生まれ、クラブの下部組織出身で久保と同学年のアンデル・バレネチェアが担っている。16歳でトップチームデビューを果たした彼のポテンシャルがずば抜けていることは以前から知られていたが、これまでケガに苦しめられパフォーマンスが安定しない選手との印象を持たれていた。
今季はその殻を破って飛躍的な進化を遂げ、左サイドでプレーする右利きのウインガーとしてラ・リーガ開幕からの8試合すべてに先発し、チームで最も違いを生み出す選手という地位を久保から奪う活躍を見せている。
バレネチェアに今季見られる変化として、まずフィジカル面の著しい成長が挙げられる。ケガをせず、最後までプレーできるようになったのは大きい。今季3試合でフル出場しているが、それまで90分間プレーしたのは、2021年12月の国王杯が最後だった。
さらにプレーへの関与が大幅に増えて、久保の右サイドよりも左サイドからの攻撃が多くなっている。持ち味の攻撃的な姿勢や1対1の強さを発揮しつつ、ドリブル、クロス、シュートなどを駆使してゴールに向かうことはもちろん、コンビネーションプレーに積極的に関わり、味方の決定機を演出するプレーにも磨きをかけている。
バレネチェアの好調ぶりはデータにも表われており、重要なスタッツで久保を上回っている。両選手ともに1ゴールを挙げているが、それ以外の成績は以下のとおりだ。
バレネチェアは久保を、アシスト数(3対0)、ドリブル成功数(21対7)、シュート数(13対8)、パス成功数(224対155)、クロス数(36対20)で凌駕している。これらはシーズン序盤の数字にすぎないが、ピッチ上で見せてきたことを裏付けるものだ。
それでも、久保の総合的なレベルの高さ、足首のケガが回復間近であること、そしてバレネチェアが調子を崩す可能性がある点も考えると、シーズンが進むにつれて、久保は必ずいつもどおりの存在感を取り戻していくはずだ。
ただ、現状の久保のプレーは悪化の一途を辿っている。直近のラージョ戦(0-1)がまさにそうだった。ゲデスとの交代で最後の30分間出場したが、右サイドで孤立し、機動力を発揮できず、ほとんどプレーに関与できなかった。さらに、ピッチに入った途端に負傷箇所付近に2度激しい打撃を受け、痛みからピッチに倒れ、足を引きずりながら立ち上がるシーンもあった。全体的に精彩を欠き、コンディションがよくないことが伺えた。
この日のプレーから推測するに、久保がパラグアイやブラジル相手に本領を発揮できる可能性は低いかもしれない。しかし、彼にとって代表招集がどれほど重要であるかを我々は承知しているし、今のラ・レアルを取り巻く緊迫した雰囲気から、一旦、心理的に距離を置けるのはいいことかもしれない。
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