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クラブワールドカップ4強決定 レアル・マドリード、パリ・サンジェルマンが全力で戦う理由 (2ページ目)

  • リカルド・セティオン●文 text by Ricardo Setyon
  • 利根川晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko

【歴史に名を刻むチャンス】

 この賞金総額は2022年カタールW杯でFIFAが代表チームに支払った賞金総額(4億4000万ドル)の倍以上に相当する。ちなみに優勝したアルゼンチンが受け取ったのは4200万ドルだった。

 つまり、いま世界で最も高額なサッカーの大会は、ワールドカップでなくクラブワールドカップなのだ。

 もちろん、PSGやマンチェスター・シティのような億万長者が所有する資金力豊富なクラブにとって、この賞金を受け取れるか受け取れないかが死活問題になるわけではない。それでも、これだけの収入は彼らにとっても魅力的だろう。選手の年俸、補強、施設への投資など、あらゆる分野の「武器」となる。

 そしてもうひとつ、この大会は「歴史に名前を刻むチャンス」でもある。今回から導入された32クラブ制の大会の初代王者となることは、クラブのレガシーとなり永遠に語り継がれることになる。

 スペインでは法律で、リーガの選手に3週間の休暇と2週間のプレシーズンが義務づけられている。そのため、たとえばレアル・マドリードは、新シーズンの最初の2、3試合をカスティージャ(Bチーム)の選手を使って戦うことになるかもしれない。しかし、そうまでしても、彼らはこのタイトルをほしがっている。なぜなら初代王者になるチャンスは、もう2度とないのだから。

 一方、南米のクラブがクラブワールドカップにかける熱量はいつもながら尋常ではない。数年前まで2部リーグだったボタフォゴが欧州王者を倒し、パルメイラスは自家用機で乗り込み、優勝すれば選手に破格のボーナスを払うと約束した。アルゼンチンやメキシコのクラブも、名誉と誇りを胸に全力で戦った。とんでもない物価高にもかかわらず、南米から熱狂的なサポーターがアメリカにやって来た。

 もちろん彼らにとって、賞金はヨーロッパのクラブ以上に重要かつ魅力的だ。しかしそれだけではない。南米のチームにとってこの大会は「ヨーロッパへの挑戦」であり、「本物のサッカーはヨーロッパだけではない」と証明するための戦いなのだ。

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