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【チャンピオンズリーグ】PSGに「金満クラブ」の面影はもうない ルイス・エンリケは世界最高のポゼッションサッカーを構築した (2ページ目)

  • 中山 淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi

【ビルドアップの基礎を浸透させた】

「チーム作りのプロセスにおいて、1年目は分析のためのシーズンで、2年目の今シーズンは成長のためにある。来シーズンも現在のチーム作りを継続するつもりだが、しかし今シーズン、すでにチームは大きく前進している」

 CL準決勝第2戦に臨む会見で、ルイス・エンリケは自分のこれまの仕事についてそう語った。

 たしかに現在、世界中で高く評価されているPSGのプレースタイルも、昨シーズンに植えつけたベースがあってこそのポゼッションサッカーと言っていい。

 基本布陣としては4−3−3でありながら、ビルドアップから敵陣でのボール保持においては3−2−5に可変するPSG。そのサッカーの構造は、マンチェスター・シティでペップ・グアルディオラ監督が成功に導いた可変システムと基本的に同じだ。

 最大の目的は、ボールを握り続けて相手を圧倒するためのシステム。現時点において、ポゼッションサッカーを標榜するなかでは理想的なプレースタイルと言える。

 しかし、最初から現在の可変システムに取り組んだわけではなく、初年度はボール保持の基礎作りから着手。4−3−3を基本としながら選手たちにビルドアップの基礎を浸透させ、時には4−2−2−2(4−4−2)を、あるいは3−4−2−1も採用しながら、少しずつポゼッションのためのポジショニングを植えつけた。

 初めて明確な可変を見せたのは、昨年3月のクープ・ドゥ・フランス準々決勝、ニース戦。本来MFの神童ワレン・ザイール=エムリを右SBで起用した時だ。

 PSGはその時期、CLラウンド16でレアル・ソシエダを破り、その約1カ月後の準々決勝でバルセロナとの対戦が控えていた。そのため、当初は対バルセロナ対策の一環と思われた。しかしそのバルセロナ戦では、ニース戦後の国内リーグでも多用したその可変システムを封印する。

 つまり、もともとルイス・エンリケは現在の可変システムの採用を視野に入れてチーム作りを進めていたと見て間違いない。それが、本人の言う「1年目の分析」なのだろう。

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