【チャンピオンズリーグ】PSGに「金満クラブ」の面影はもうない ルイス・エンリケは世界最高のポゼッションサッカーを構築した (3ページ目)
【主軸のデンベレをメンバー外に】
そして2年目の今シーズンは、可変システムの精度が高まり、誰が出場しても国内では無双を誇った。しかし一方、CLでは得点源キリアン・エムバペの抜けた穴が埋められず、ポゼッション後のフィニッシュワークに課題を露呈する。
CL第2節からのアーセナル戦、PSV戦、アトレティコ戦、バイエルン戦と、試合を支配しながらゴールを決められず、白星を逃す状況が続くと、グループフェーズ敗退の危機に陥った。
そんな苦境のなかで希望の光となったのが、昨年のクリスマスシーズンにチャンスメーカーからフィニッシャーに華麗なる変身を遂げたウスマン・デンベレだ。
その変貌ぶりを会見で問われたルイス・エンリケは、冗談まじりに「クリスマスに何を食べたのか、本人に聞いてくれ(笑)」と返す一幕もあった。結果、ゴールを量産できるウインガーを1トップ起用する試合が増え、課題だったCLでの決定力不足はあっという間に解消された。
もっとも、ルイス・エンリケの評価は、戦術構築にとどまらない。バルセロナ時代もそうだったように、チーム内に自分の意思決定の妨げになる特別な選手を作ることを嫌う指揮官は、PSGでも自分のマネジメントスタイルを貫いている。
そのスタイルについて、特にクローズアップされるエピソードがある。それは、チーム内のルール違反を犯した主軸のデンベレを、大事なCLグループフェーズ第2節のアーセナル戦(2024年10月1日)でメンバーから外したことだ。
結果的にPSGは、その試合を落として苦しむことになる。しかしルイス・エンリケ本人は、内部崩壊の原因と批判されたその決断こそが、チーム作りにおける最大の意思決定だったと振り返っている。
もちろん、体質改善や練習方法の変更にも取り組んだだけに、その一件だけがデンベレの変化のきっかけになったとは言えない。だが、それでものちにデンベレが覚醒して、チームとしても大きくレベルアップを果たしたことを考えれば、ルイス・エンリケの苦渋の決断がデンベレのみならず、チーム全体に大きな影響を与えたことは間違いないだろう。
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