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レアルのチャンピオンズリーグ連覇に黄信号 アーセナルの衝撃ゴールには伏線があった

  • 杉山茂樹●text by Sugiyama Shigeki

 チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝。4試合はいずれも実力的に拮抗した戦いとなるが、優勝争いに最も影響する試合はどれかと言われれば、アーセナル対レアル・マドリードになる。

 英国ブックメーカー各社の予想によれば、2番人気対3番人気の対戦だ。アーセナルはUEFAランク1位のプレミアリーグの最上位クラブ。対するレアル・マドリードはディフェンディングチャンピオンで、同ランク2位のスペインリーグで現在、首位バルセロナに次ぐ成績を残している。格的にもレベル的にも両者は高位で拮抗する。

 好勝負必至。アーセナルホームで行なわれたファーストレグは、実際そうした雰囲気で始まった。その時、3-0という結果を予想することはできなかった。

 ヴィニシウス・ジュニオール、キリアン・エムバペ、ジュード・ベリンガム、ロドリゴで形成するレアル・マドリードの攻撃陣は、スタンドを埋めたアーセナルファンにも脅威に映っていたに違いない。ミケル・メリーノをトップに、左右のウイングにガブリエル・マルティネッリ、ブカヨ・サカ、左右のインサイドハーフにデクラン・ライス、マルティン・ウーデゴールで構成するアーセナルを、迫力、線の太さという点で、上回っているかに見えた。

レアル・マドリード戦でゴールを決めたアーセナルのデクラン・ライス(右)とミケル・メリーノphoto by Stuart MacFarlane/Arsenal FC via Getty Imagesレアル・マドリード戦でゴールを決めたアーセナルのデクラン・ライス(右)とミケル・メリーノphoto by Stuart MacFarlane/Arsenal FC via Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 序盤、ボール支配率で上回ったのはアーセナルだが、たとえば前半4分、ヴィニシウスにボールが渡ると雰囲気は一変、ホームを埋めたアーセナルサポーターに戦慄が走った。レアル・マドリードはその時、恐ろしい集団に見えた。

 前半30分ぐらいまで、チャンスの数では、ボール支配率でやや劣るレアル・マドリードがむしろ勝っていた。アーセナルがボールを悪い形で失い、そこから1本のパスで場が一転するシーンが発生した。得点の可能性はレアル・マドリードのほうが上回るかに見えた。

 アーセナルに明るい兆しが見えたのは前半32分、サカがマークにきたベリンガムと対峙しながら縦突破を決めたプレーだ。マイナス気味の折り返しはゴール前を通過していったが、誰かが真ん中で触れば......という決定的な崩しだった。

 サカはさらに前半40分にも最深部からの折り返しを決めている。対峙するダビド・アラバに仕掛ける素振りを見せながら、脇のウーデゴールにボールを預けるとパス&ゴーでアラバの背後を取る。リターンを受けるやライン際からゴール前に決定的なボールを送った。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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