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レアルのチャンピオンズリーグ連覇に黄信号 アーセナルの衝撃ゴールには伏線があった (2ページ目)

  • 杉山茂樹●text by Sugiyama Shigeki

【ロベルト・カルロスを想起するFK】

 レアル・マドリードに傾きかけた流れは、このあたりからアーセナルサイドに移り始める。前半終了間際には、レアル・マドリードのGKティボー・クルトワを連続して急襲する大きなチャンスを迎えた。右SBユリエン・ティンバーが上げたセンタリングをライスがヘッド。クルトワがセーブしたこぼれをさらにマルティネッリが枠内シュートを蹴り込むという、この日一番の派手なチャンスだった。

 得点こそならなかったが、パンチは効いていた。ダウンこそ奪えなかったが、パンチの重さでレアル・マドリードに劣るとみられていたアーセナル自身を勇気づけるに十分な迫力ある攻撃だった。

 後半、最初にチャンスを作ったのはレアル・マドリードだった。5分、アントニオ・リュディガーの縦パスを、ベリンガムがワンタッチでさばき、それを受けたエムバペがシュートに持ち込んだシーンだ。揺らしたのはサイドネットだったが、後で振り返れば、シーソーの揺れ幅が大きくなった瞬間だった。

 次はアーセナルの番になる。後半12分だった。タッチライン際で右SBティンバーからパスを受けたサカが、対峙するアラバを引きつけながら20~30メートル、カットインする。少しでも押されたらすぐに倒れる準備ができている、まさに謀ったようなドリブルだった。

 その策略にアラバははまる。イルファン・ペリト主審も釣られるように笛を鳴らした。ゴールまで27~28メートルはあり、ほぼ正面であるためキックに角度を見出しにくそうな、決定的には見えない位置でのファウルだった。

 レアル・マドリードが築いた壁もゴールをしっかり覆っていた。だがライスの蹴ったキックは、こちらの想像を上回る軌道でゴールに向かった。枠の2メートルほど外から巻くような軌道で、ギリギリにネットに吸い込まれていった。

 想起するのは1997年に開催されたトルノワ・ドゥ・フランス。リヨンのスタッド・ジェルランで行なわれたフランス対ブラジル戦で魅せたブラジルの左SBロベルト・カルロスのFK弾だ。左足のスライスという軌道だったので、右足のカーブキックだったライスとは逆だが、枠の2メートルほど外から巻いてギリギリでゴールに吸い込まれるという衝撃的な絵柄は共通していた。

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