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バルサにとって伝説的シーズンに? 「相手をねじ伏せる攻撃」はCL8強でもさく裂するか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 4月9日(現地時間)、バルセロナはチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝で、ドイツのドルトムントと、ベスト4進出を懸けてまずはホームでファーストレグを戦う。

「バルサ優位」の予想は動かない。

 バルサのハンジ・フリック監督は、バイエルンの監督時代にドルトムントと5戦して5勝。今シーズンのCLリーグフェーズでも敵地で対戦し、2-3と打ち勝っている。6勝無敗で「カモにしている」相性のよさだ。

 無論、勝負は時の運である。何が起きてもおかしくない。特にバルサはリスクを背負った戦いをしているだけに......。しかし、結果がどう転ぶにせよ、バルサは英雄の冒険譚のようなアグレッシブなサッカーを見せるだろう。

今季からバルセロナを指揮、勝利を重ねているハンジ・フリック監督 photo by Nakashima Daisuke今季からバルセロナを指揮、勝利を重ねているハンジ・フリック監督 photo by Nakashima Daisukeこの記事に関連する写真を見る 今シーズン、フリック・バルサは欧州を席巻している。スペインスーパー杯優勝、CLベスト8進出、スペイン国王杯決勝進出、ラ・リーガでは首位。多くの試合で4点、5点とゴールに放り込み、相手をねじ伏せる攻撃力が代名詞だ。

 一時は極端なハイラインが狙われて失点を繰り返し、批判の的になったこともあった。バルサ系スポーツ紙『スポルト』も、「パーソナリティ? 不必要なリスク?」などと皮肉っていた。しかしドイツ人指揮官は一切耳を貸さず、"変人"のように扱われながらも変節しなかった。

 振り返ると今季の序盤、バルサはラ・リーガで開幕7連勝した後、CLでバイエルンを4-1と下し、レアル・マドリードを敵地サンティアゴ・ベルナベウで0-4と撃破。無敵を誇っていた。ところが11月、レアル・ソシエダに負けると、歯車が狂った。セルタに引き分け、ラス・パルマスに負け、レガネス、アトレティコ・マドリードに連敗を喫し、深刻な失速ぶりだった。

 しかし、年が明けて、スペインスーパー杯決勝でレアル・マドリードを5-2で下すと、勢いを取り戻した。2025年に入ってからは無敗で、ハイラインによる攻撃を確立。プレッシングのファーストディフェンスが整備され、トランジションも精度を高め、弱みをさらけ出さなくなった。フリックの揺るぎない信念が、バルサ伝統の「ボールを持っていれば失点はしない」という美学と結びつき、伝説的シーズンになりつつある。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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