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バルサにとって伝説的シーズンに? 「相手をねじ伏せる攻撃」はCL8強でもさく裂するか (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【攻撃のための守備の構造を整備】

 ラミン・ヤマル、ペドリのプレーは確かに神がかっている。彼らを見るだけで、バルサの強さは語れるだろう。しかし、ふたりが際立っているのは、バルサというチームの仕組みのおかげでもある。

 それはどのような構造なのか?

 90分間、敵陣でプレーする構造を保つには、まず相手を恐れさせないといけない。単純に言えば、それは暴風のような攻撃力である。言わば「攻撃こそ防御なり」の猛々しさだ。

 ここまでラ・リーガでは最多83得点を記録し、相手は心をへし折っている。2位レアル・マドリードが63得点、3位アトレティコ・マドリードが49得点、最下位バジャドリードが19得点だから、並外れた数字である。

 レアル・マドリードのキリアン・エムバペを抑えて得点ランキングトップに立つロベルト・レバンドフスキは25得点。レアル・ソシエダの総得点が30だから、まさに怒り狂った神のような暴れ方と言える。第29節のジローナ戦で見せたアクロバティックなボレーでの得点は圧巻だった。

 そしてフリックは、レバンドフスキを中心にした得点力を最大化するため、ロジカルに守備を整備した。

 フリックは前線にハイプレスを求めるが、やみくもではない。36歳のレバンドフスキにセンターバックを追い回させても、足を使ってせっかくの得点力を失わせるだけ。そこで、敵センターバックには両サイドの足を使える選手が寄せ、レバンドフスキとトップ下は相手のボランチのラインを寸断。苦しい状況に追い込み、「蹴らせる」。簡単にはハイラインの裏を狙わせない形だ。

 ドイツ人指揮官は、「1点多く取れば勝つ」というバルサの精神を信奉し、"ストライカーを有効に活用するのが大事"という原則を心得ている。ストライカーが余力を残して得点を狙えるポジションを取るだけで、危険を感じた相手DFがつられるためにスペースが生まれる。そこに、ラフィーニャ、ダニ・オルモ、フェルミン・ロペス、ガビなどが突っ込む。

 守備のための守備ではなく、あくまで攻撃で相手をノックアウトするための守備の構造だ。

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