バルサにとって伝説的シーズンに? 「相手をねじ伏せる攻撃」はCL8強でもさく裂するか (3ページ目)
また、フリックは下部組織「ラ・マシア」の若手を抜擢する手腕を発揮しており、マルク・カサドなどを用いたのは見事だった。ただし、固執はしていない。自分が敷いた仕組みのなかで個性を発揮できる選手を次々に登用。しかもそのタイミングが優れている。
たとえば、一時は戦力外の報道があったフレンキー・デ・ヨング、エリック・ガルシアを、うまく生かしている。33歳のイニゴ・マルティネスはキャリアハイの安定感で、ジュール・クンデは「センターバックを希望する」と起用に不満げだったのが懐かしいほど、今や世界最高の右サイドバックの称号にふさわしい。懐疑的な声が大きいフェラン・トーレスも、今年に入ってカップ戦も含めて11得点で切り札的存在になっている。
フリックが推し進めたサッカーを、選手たちが体現している。
エキセントリックな戦いこそ、バルサがバルサである所以だろう。言い換えれば、ハイラインの危うさは、彼らの流儀を反映しているのかもしれない。
「私はちょっとした変人なんだよ。理想主義的なプロフェッショナル。だから、そういう風に見てもらえればいいよ」
これはバルサの中興の祖と言えるヨハン・クライフの言葉である。偏屈さが魅力的に映るか。そのプロフェッショナリズムこそ、バルサの栄光そのものなのである。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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