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チャンピオンズリーグで神セーブ連発のアリソンを見たか リバプールのパーフェクトGKはバロンドール候補 (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【クセが強い南米の歴代GKのなかで...】

 タファレルのように安定感のあるタイプは歴代のブラジル代表にはあまりいなかった。1958年スウェーデンW杯での初優勝時のGKジウマールは名GKとして知られているが、1970年メキシコW杯でのフェリックスは唯一の弱点とも言われていた。ペレ、トスタン、リベリーノ、カルロス・アルベルトなどフィールドプレーヤーが強力すぎたこともあるが、傑出したGKという印象はない。

 1982年スペインW杯でのバウジール・ペレスは敗退の要因のひとつと批判されている。「黄金の4人」を中心に圧倒的な実力を持ちながらの2次リーグ敗退で、スケープゴートにされた感はあるが、やはりワールドクラスという感じはなかった。ただ、タファレル以後は世界トップクラスのGKを輩出するようになっている。

 セレソンの第一GKではなかったが、ロジェリオ・セニは100ゴール以上を決めた変わり種だ。サンパウロではリベルタドーレス杯を3度獲得するなどの伝説的GK。得点はPK、FKからで、キックの精度が抜群だった。

 他国ではパラグアイ代表で活躍したホセ・ルイス・チラベルトがセニ同様にPK、FKを得意としていて、パラグアイ代表として8ゴールを決めている。中米になるが、メキシコ代表GKホルヘ・カンポスはUNAMでチーム最多得点者だった。ただ、カンポスはGKだけでなくFWとしてプレーしていて、フィールドプレーヤーとしての得点である。

 桁外れに変わっていたのがコロンビア代表のレネ・イギータだ。浅いディフェンスラインの裏をカバーするスイーパーGKの先駆だが、ボールを持つと相手FWをドリブルで抜くプレーも再三。自由奔放。あえてリスクを拡大するようなプレーぶりは批判もつきまとっていたが、ある意味現代のGKの先駆者であり、当時の麻薬組織に牛耳られていたコロンビア国民にとっては、危険を逆手にとるような大胆さが熱狂的に支持されていた。

 クセの強いラテンの歴代GKのなかで、アリソンはむしろ地味に思える。地味というより完璧すぎてかえって特徴がないように見えるのだが、史上最高クラスのGKだと思う。パリSG戦のような大活躍があと数試合あれば、史上ふたり目のバロンドールは現実味を帯びてくるが、そんな危うい試合はたぶん本人が望んでいないだろう。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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