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ジャンフランコ・ゾラのFKは誰も止められなかった 「25メートル前後だったらPKよりも簡単」 (3ページ目)

  • 粕谷秀樹●取材・文 text by Kasuya Hideki

【魔法使いのような一撃】

 サポーターに受け入れられるまで、さして時間はかからなかった。デビュー4戦目となるエバートン戦で、およそ25メートルのFKをズバリと刺す。1997年2月のマンチェスター・ユナイテッド戦では、飛び込んできたDFデニス・アーウィンを難なくかわし、GKピーター・シュマイケルの反応を許さないかのようなゴールを決めた。

 また、FAカップでも7試合4ゴールを記録。同大会はチェルシーにとって27年ぶりの戴冠となり、ゾラが原動力だったことに疑いの余地はない。こうした活躍によって、FWA(英国サッカーライター協会)のMVPにも選ばれている。入団当初は「プレー強度の高いプレミアリーグでは通用しない」とまで批判されたものの、誤った先入観を自らの力で払拭してみせた。

 その後もゾラの活躍は続く。1997-98シーズンはカップウィナーズカップ(現ヨーロッパリーグ)とリーグカップ優勝に導き、1999-2000シーズンには3年ぶりにFAカップを制した。ハイライトはノリッジ戦だろうか。ヒールでボールをコントロールしながら反転し、鮮やかにゴールを仕留めている。

「魔法使いのような一撃だった」

 フリットに代わって1998年2月から監督を務めていたヴィアッリが絶賛し、数多くのメディアが「AMAZING」と称賛するほど、アイデアに満ちたシュートだった。

 さて、ゾラはチェルシーで7年間プレーし、通算80ゴール42アシスト。そのうち14ゴールがFKだった。クロスバーやポストを叩いた一撃を含め、彼の右足から放たれるシュートには魔法のような美しさを醸し出していた。人呼んで「マジックボックス」。

「25メートル前後のFKだったら、PKより簡単だよ。練習の成果かな」

 彼は決して浮つかない。おごりもしない。サインを求められても嫌な顔をしない。若手のアドバイスにはいつでも応じる。街角で声をかけられれば握手をしたり、写真撮影に応じたり......。とにかくいい人だ。

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