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久保建英が見せたレアル・マドリードを防戦一方にさせる勢い 勝負を分けたのは何か

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

 スペイン国王杯準決勝ファーストレグ、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は世界王者レアル・マドリードに対し、本拠地レアレ・アレーナで乾坤一擲の勝負を挑んでいる。

 前半15分ほどまで、ほとんど自陣に踏み込ませていない。鋭い出足でビルドアップをことごとく分断。ショートカウンターから果敢にゴールを脅かしていた。

 健闘するラ・レアルの攻撃を牽引したのが、右サイドアタッカーで先発した久保建英だった。

 久保は序盤から横へのドリブルだけでレアル・マドリードを撹乱。混乱を与えるなか、敵陣でエドゥアルド・カマヴィンガからボールを奪い、3人に包囲されるも、間合いを使って飛び込ませず、ブライス・メンデスとのワンツーから右足シュート。これはGKに防がれたが、止まらない。次はダニ・セバージョスからボールを奪い、アンデル・バレネチェアとワンツーの形でエリア内に入り、後ろからアントニオ・リュディガーに倒された(PKの笛は鳴らなかった)。

 開始5分間、相手を防戦一方にさせる勢いだった。

レアル・マドリード戦にフル出場、レアル・ソシエダの攻撃を牽引した久保建英 photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAレアル・マドリード戦にフル出場、レアル・ソシエダの攻撃を牽引した久保建英 photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIAこの記事に関連する写真を見る「ラ・レアルは、マドリードの息を詰まらせるほどのプレッシャーで迎えた。特に久保の右サイドは、暴風で身動きさせなくするようだった。(久保の生まれ故郷である)川崎にもストリートサッカーが存在することを(負けん気やずる賢さで)証明していた。もっとも、最初に訪れた彼のシュートチャンスは(アンドリー・)ルーニンに阻まれた」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』は、独特の臨場感で伝えている。

 前半18分、一発のカウンターからブラジル代表FW、18歳のエンドリッキに呆気なく先制点を決められてしまうが、その後もラ・レアルは久保を中心に能動的に攻め続けた。何度も際どいボールがゴール前で飛び交った。ミケル・オヤルサバルがヘディングで狙い、こぼれ球を久保が右足で折り返したボールはそれぞれGKにブロックされた。あとひと息のところまで追い込んでいたが......。

「ストライカー不在」

 昨シーズンから解消できない問題は深刻で、いくらポイントにボールを入れても、飛び込むのが遅れていた。決定力にも欠けた。エンドリッキの一発に沈んだ点を考えても、ここに勝負の差はあった。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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