久保建英が見せたレアル・マドリードを防戦一方にさせる勢い 勝負を分けたのは何か (3ページ目)
ひとつだけ苦言を呈するなら、レアル・マドリード戦の久保はやや「倒れ過ぎ」ていた。際どいチャージはあったが、スロー再生で「明らかに被害者だった」という不当なジャッジはなかった。スペインでは、こうしてファウルをアピールする姿は本人の価値を下げる。VARもあるだけに、反則かどうか微妙なシーンで座り込んでアピールを続けるのは慎むべきだろう。
かつてリオネル・メッシが世界最高とされ、ネイマールが二番手に甘んじた理由はひとつではない。ただ、「前者はプレーし続け、後者はファウルを訴えたから」という意見は根強くある。メッシはひどいファウルを受けた後、怒髪天を衝き、敵を絶望させるドリブルで勝負を決した。それが真の勝者の姿だ。
サンティアゴ・ベルナベウでのセカンドレグは、ラ・レアルにとって難しい試合になるだろう。しかし、ストライカーがいないのは不利だが、勝ち目がないわけではない。
矛盾した表現かもしれないが、厳しい条件で勝機を見出せるのが、レアル・マドリードが恐れ、そして求める、「王者の精神を持つ」選手だ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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