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久保建英が見せたレアル・マドリードを防戦一方にさせる勢い 勝負を分けたのは何か (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【久保の最大の持ち味は?】

 結局、試合はレアル・マドリードが0-1で先勝に成功した。カルロ・アンチェロッティ監督率いる王者は守りきれる"強さの厚み"を持ち、何もないところから得点できる。それ故、むしろ"劣勢"が彼らの勝利のパターンなのだ。

 そこであらためて、久保の適性が明瞭になったと言えるだろう。久保が18歳でプロ契約したレアル・マドリードだが、その戦いの流儀は合わない。実力の問題ではなく、適性の問題である。

 レアル・マドリードは、勝利の構造を作らなくても勝利をもぎ取れる稀有な王者と言える。アンチェロッティ監督が慧眼の持ち主で、選手の特性や状態を見抜き、最高の組み合わせを作り出す。そのうえで、ピッチに送り出された選手たちが、変りゆく戦況のなか、適切なプレーを選択できる。それはトレーニングを重ねた戦術パターンではない。即興的な戦いを作り出し、勝敗を決するのだ。

 久保にはそこで通じる臨機応変さも、勝利のメンタリティもある。しかし、最適のプレーはできないだろう。なぜなら、彼の最大の持ち味は、ボールを握って押し込むなかで、コンビネーションにより技術や俊敏さを使うことにあるからだ。

 レアル・マドリードは、ジュード・ベリンガム、キリアン・エムバペ、ヴィニシウス・ジュニオールなどに象徴されるチームである。パワーや速さの強度と闘争心を高い次元で持ち、それを本能的にかみ合わせ、プレーを旋回させる。ラ・レアル戦で久保番だったフラン・ガルシアを見ても、左サイドバックとしてはラ・リーガで有数の屈強な肉体の持ち主だ。

 一方、アルダ・ギュレルのような技巧派選手は、なかなかポジションを確保できない。昨シーズンから、ひらめきやボールタッチは「天才的」と言われてきた。しかし、コンビネーション重視ではないチームでは消えてしまうのだ(ラ・レアル戦も先発選手では最低評価だった)。

 コンビネーションを梃子(てこ)に勝利をつかめるチームでこそ、久保は最高の輝きを放つ。

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