エリック・カントナという「劇薬」に誰もが心酔 実働わずか4年半でトラブルメーカーはマンUの王様となった (4ページ目)
【風格漂うプレーはまさにKING】
しかし、カントナの存在が緊張感をもたらし、その後のマンチェスター・Uが栄華を築く礎(いしずえ)になったことに異論を挟む余地はない。1993-94シーズンは34試合18得点12アシスト。チームをリーグ連覇とFAカップ優勝に導き、カントナ自身は選手協会が選ぶMVPにも輝いている。
身体の軸がまったくブレず、それでいてマーカーに尻もちをつかせる強烈な切り返し、並外れた体幹を活かしたヘディング、味方の足もとに、スペースに、絶妙のスピードと角度で提供される多彩なパス......。硬軟取り混ぜたプレーには風格すら漂う姿は、まさしく「KING」だった。
練習態度の悪いマーカス・ラッシュフォード(現アストン・ヴィラ)、勝っても負けてもロッカールームに大音量でラップを流していたポール・ポグバ(現・無所属)、ジェシー・リンガード(現FCソウル)のようなタイプは、生まれてきた時代を呪ったほうがいい。フランス人のカリスマに触れていたら、彼らはせっかくのタレントを無駄にしなかっただろう。
世界一にはなれず、バロンドールも獲れなかった。マンチェスター・Uでの実働期間は4年半に過ぎない。しかし、カントナが残した記憶は鮮明で、今でも多くの人々がリスペクトしている。
著者プロフィール
粕谷秀樹 (かすや・ひでき)
1958年、東京・下北沢生まれ。出版社勤務を経て、2001年
、フリーランスに転身。プレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、 海外サッカー情報番組のコメンテイターを務めるとともに、コラム 、エッセイも執筆。著書に『プレミアリーグ観戦レシピ』(東邦出 版)、責任編集では「サッカーのある街」(ベースボールマガジン 社)など多数。
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