初瀬亮はなぜ今、神戸を離れて海を渡る決断をしたのか「正式にサインを終えたあと、涙がボロボロとあふれて...」 (4ページ目)
「2017年に出場したU-20W杯で持ち味である攻撃の部分が世界でも通用すると思えたのは自信になったし、左右両足で蹴れることを強みにしていこうと思ったのも、この大会がきっかけです。それによって『海外でプレーしたい』という思いも強くなったけど、そのためにはまずガンバで試合に出て、結果を残し続けることとが大事だと思っていました。
なのに、2018年は出場機会が激ってしまい......。このまま居心地のいいガンバにいたらなんとなく時間が過ぎていきそうな気がして、環境を変えよう、と。自分にとってはめちゃめちゃ大きな決断でした」
ところが、ヴィッセルに移籍した2019年は前半戦こそ先発に名を連ねられたものの、同年夏の酒井高徳の加入を受け、同9月にはJ2のアビスパ福岡へ育成型期限付き移籍。2020年に再びヴィッセルに戻ってからは、2021年こそ33試合に絡む活躍を見せたが、翌年には約半分の出場数にとどまるなど、継続してレギュラーに定着できない時期を過ごした。
その状況を受けて移籍を考えないでもなかったが、かつて動画で見た中村俊輔(現横浜FCコーチ)の言葉が脳裏によみがえり、踏みとどまった。余談だが、中村は幼少期の初瀬少年が、左足のキックを磨くきっかけにもなった憧れの人でもある。
「(中村)俊輔さんの『若い時に、試合に出られないからといって、簡単に移籍をするな』って言葉を自分に当てはめて、確かにこのまま移籍するのって自分にとっては"逃げ"やな、と。なので、もう一回、自分を磨き直そうと決めて、2022年のシーズン後、オフを返上してひたすらトレーニングに向き合ったんです。ハイアルチ(低酸素環境でのトレーニング)をはじめ、いいと言われたものは『全部やってやる』と死に物狂いで取り組んだ。まさに『腐ったら終わる』という一心でした」
(つづく)
初瀬亮(はつせ・りょう)
1997年7月10日生まれ。大阪府出身。ガンバ大阪のアカデミーで育ち、2016年にトップチームに昇格。2019年にヴィッセル神戸に移籍。同年9月にアビスパ福岡へ育成型期限付き移籍をするも、2020年にはヴィッセルに復帰。2023シーズンにはレギュラーに定着し、同シーズンと2024シーズンのJ1連覇にも貢献した。2025年2月、イングランド2部のシェフィールド・ウェンズデイに完全移籍。念願の海外でさらなる飛躍が期待される。
フォトギャラリーを見る
4 / 4