初瀬亮はなぜ今、神戸を離れて海を渡る決断をしたのか「正式にサインを終えたあと、涙がボロボロとあふれて...」 (2ページ目)
でも、2024年もヴィッセルで継続してピッチに立つことができ、J1リーグ連覇にも貢献できたことで、再び海外への想いが強くなった。なのでもう一度、代理人に海外移籍の可能性を探ってもらったんです。そしたら、ウェンズデイが『興味がある』と手を挙げてくれた。ヴィッセルからは契約延長の話をいただいていたので悩むところでしたが、それを機に一気に海外に気持ちが傾きました」
ただ、海外ならどの国、どのリーグでもいいとは思っていなかったという。若い選手であれば、最初のチームを足がかりに、時間をかけてステップアップしていくイメージを描けるかもしれないが、初瀬は今年の7月で28歳になる。だからこそ、あえて最初から自身に高いハードルを設け、できるだけ早く世界4大リーグに近づける移籍を目指した。
「日本代表にも選ばれていない僕が、プレミアリーグやブンデスリーガといったステージを目指すのは、難しいチャレンジだとわかっていました。ただ、どこでもいいから海外に飛び出してプレーできればいい、という年齢でもない。なので、代理人とも最初からある程度、リーグを絞って可能性を探っていこうと話していました」
もっとも海を渡った1月半ばの時点では、どのクラブとも正式な契約は成立していなかったという。先にも触れたとおり、ウェンズデイが初瀬に興味を示していたのは事実だが、「契約するかはわからない」とはっきり伝えられてもいた。すなわち、ヴィッセルからの契約延長のオファーを受け入れずに海を渡るということは、場合によっては所属チームがなくなる可能性があったということになる。
それでも、自分には必要なチャレンジだと考えた。
「ウェンズデイは当初、今冬の移籍ウインドウでは即戦力になりうる前線か、サイドハーフの新戦力の獲得を目指していたらしくて。クラブGMには『興味はあるけど、練習を見て決めたい』と言われていたし、正直に、僕以外にも他国の選手にも興味を持っていると伝えられていました。
でも、僕にしてみれば、少しでも興味を持ってもらえているんよね? と。なら、その可能性にチャレンジしないのは自分じゃない、と。ここで尻込みして後悔するくらいなら、チャレンジして後悔するほうがよほど自分のためになると考えました」
その思考は、彼がこれまで信条としてきた生き方にも通ずるものだ。
幼少期から初瀬は、常に父の「自分が決めたことを簡単にあきらめるな」「自分の選択に保険をかけるような男になるな」という教えのもとで、いろいろな選択をしてきた。
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