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クバラツヘリアは母国をワールドカップへ導けるか 世界トップのウイングがパリ・サンジェルマンへ (3ページ目)

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

【マイナー国のスーパースター W杯出場なるか】

 クバラツヘリアの目標は、チャンピオンズリーグ(CL)制覇とジョージア代表のワールドカップ出場だという。

 パリ・サンジェルマンへの移籍が実現すれば、CL制覇の夢に近づくと考えているかもしれない。ジョージア代表ではすでにユーロ2024に出場を果たしている。

 ユーロではグループステージを3位で通過してベスト16に進出。ラウンド16では優勝したスペインに1-4で完敗だったが、初出場でベスト16は快挙だった。クバラツヘリアはすでにジョージア史上最高の選手とされている。

 ナポリのレジェンドだったジャンフランコ・ゾラはクバラツヘリアのプレースタイルをジョージ・ベストに喩えていたが、北アイルランド代表のベストはW杯には出られなかった。マンチェスター・ユナイテッドでベストの系譜を継いだ名ウイング、ライアン・ギグスもウェールズ代表でW杯に縁がなかった。

 その時代の大スターでも、生まれた国の代表チームが弱小でW杯でプレーできなかったケースとしては、アヤックスの10番だったヤリ・リトマネン(フィンランド)、1995年にバロンドールを受賞したジョージ・ウェア(リベリア)、PSVなどでプレーしたカルシャ・ブワルヤ(セネガル)などがあげられる。マンチェスター・シティのアーリング・ハーランド(ノルウェー)もまだW杯ではプレーできていない。

 強豪国でも協会との確執で代表から離れていたベルント・シュスター(西ドイツ)、フィールド外の問題と負傷で出場経験がないカリム・ベンゼマ(フランス)、まさかの予選敗退で出られなかったエリック・カントナ(フランス)などの例はあるが、強豪国の中心選手なら半自動的にW杯には出場できる。

 予選のレベルが高い欧州で弱小国が勝ち抜いていくには幸運も必要だ。ユーロでベスト16のジョージアはもはや弱小ではないかもしれないが、予選はプレーオフを勝ち抜いての際どいものだった。ただ、W杯初出場を果たせれば間違いなく快挙であり、クバラツヘリアは祖国の英雄として崇められるだろう。

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著者プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

【写真】ワールドサッカー「新」スター名鑑

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