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久保建英の活躍で変わった日本人観 スペインで飛躍が期待できるディフェンダーはいるか

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

リーガ移籍候補を探る(4)~DF編

 久保建英はレアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)で、チームをチャンピオンズリーグに導き、昨シーズンのベスト16にも勝ち進んでいる。それはラ・リーガに挑戦してきた日本人選手としては、特筆すべき実績と言える。おかげで、日本人選手がスペイン国内で軽視されなくなった。

 彼に続く日本人選手は出るのか......最終回は日本人守備者たちの可能性を探った。

移籍説が流れている板倉滉(ボルシアMG)だが、リーガという選択は? photo by picture alliance/AFLO移籍説が流れている板倉滉(ボルシアMG)だが、リーガという選択は? photo by picture alliance/AFLOこの記事に関連する写真を見る 現在まで、スペイン1部に挑戦した日本人ディフェンダーはひとりもいない。2部でも、ヒムナスティック・タラゴナで2シーズン半にわたってプレーした鈴木大輔(ジェフ千葉)だけである。つまり、未踏の地に近いわけだ。

 鈴木は1年目の挑戦でポジションを奪い取って、チームを3位に導いた。これは小さな快挙と言える。結局、昇格プレーオフに回ってしまい、オサスナに敗れて昇格を逃したが、あと一歩で、自力で1部に手が届いていた。"たら・れば"はプロの世界で禁物だが、もし昇格をつかめていれば、違う経験を積むことができただろう。

「1年目は勢いでプレーオフまでいけましたが、2年目は苦しんで、3年目でようやく全体を掌握でき始めて......タフなリーグだと思います。練習で毎日100%を出さないと、ポジションどころか、メンバー入りさえ危うい」

 当時、鈴木はそう語っていたが、やればやるほど奥の深さを感じたという。それは守備者特有の感覚かもしれない。

「スペインではとにかく"今"が大事。どんどんチームがアップデートされる。たとえば最終節のスタメンは、1月以降の補強で入った選手が半分近くだったんです。他にも、右サイドバックはキャプテンなのに、自分がよかったら、次の試合はベンチに回る。センターバックもずっと主力選手だったのに、自分が代わりに出たあとは、出場停止が明けてもベンチ外でした。この競争の激しさは、日本ではありえない」

 Jリーグと違い、ゲーム形式になると、選手たちの目の色が変わるという。プレスは「殺しにくるんじゃないか」という迫力がある。球際の強度がまるで違った。Jリーグでは、プレスは(目の前で)止まるのだが、スペインでは勢いのままに襲いかかってくる。距離感の違いには面食らう。

 センターバックは、そうした湧き上がる熱を一身に受け止める。それは驚嘆すべき圧力で、外から見るのと、中で見る景色は別物だという。うねるような熱のなか、平常心を保てるか、常に試される。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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