旗手怜央が充実の今シーズン前半を振り返る「自分のプレーの善し悪しが結果を左右する」
旗手怜央の欧州フットボール日記 第33回
旗手怜央は決勝戦のPK戦のキッカーも務め、今季ひとつ目のタイトル、スコティッシュリーグカップを制覇。CLでは6試合に出場して経験を積み、初ゴールも記録。充実のシーズン前半を振り返った。
旗手怜央はセルティックで今季ひとつ目のタイトル、スコティッシュリーグカップを獲得 photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る
【足がつったリーグカップ決勝】
今シーズンもひとつ目の星を手にした。
セルティックに加入して4年目を迎えているが、リーグ3連覇を筆頭に、毎年タイトルを獲得する機会に恵まれている。
今シーズン、最初に手にしたのはスコティッシュリーグカップだ。
12月15日に行なわれた決勝戦の相手は、セルティックにとっての宿敵、レンジャーズ。3-3の同点で90分を終えた一戦は、延長戦でも決着がつかず、勝負はPK戦に委ねられた。
個人的には、前半にあった決定機を決めきれなかったことは悔やまれるが、時間の経過とともに、自分のところで試合を落ち着かせられていたと思う。
先発した自分は、120分を戦い終えたPK戦で、4人目のキッカーとしてペナルティースポットの前に立った。
PK戦でキッカーを務めたのは何年ぶりだろうか。今、思い出すのは、U-22日本代表の一員として参加した2019年のトゥーロン国際大会だ。U-22ブラジル代表と対戦した決勝を1-1で終え、PK戦5人目のキッカーとして登場した僕は、GKにシュートを止められて、チームは準優勝に終わった。
スコティッシュリーグカップ決勝の舞台で、それを思い出したわけではないけど、120分間を戦い終えたこともあって、PKを蹴る前には足がつりかけていた。
軽く素振りしてみると、内転筋とふくらはぎに違和感があった。念のため、もう一度、足を振ってみると何ともなく、安堵してペナルティースポットへと向かった。
慎重に慎重を重ねて、もう一度、確認しようかと思ったけど、それで足をつったら嫌だったので、これが最後のプレーだと考えて、思いきりシュートした。
決めたあとに叫んだのは、半分が条件反射で、半分が演技だ。
先攻を務めていたレンジャーズの4人目が、PKを失敗していたこともあって、自分が成功させて感情を爆発させれば、スタジアムも盛り上がるし、空気を引き寄せられると思った。特にカップ戦決勝などの一発勝負では、雰囲気も勝ち負けに影響する。5人目のキッカーを務める(前田)大然にいい形でつなぐためにも、効果的な行動だと思った。
その大然がPKを決めて優勝が決まり、走りだそうとした瞬間、やはり限界に達していたのか、足をつった。駆け寄ってきてくれた(古橋)亨梧くんが足を伸ばしてくれて、少しだけ遅れて歓喜の輪に飛び込んだ。
やっぱり、タイトルの景色も、味も、匂いも最高だ。時間にすれば、その喜びは一瞬だが、優勝は他の何にも代えがたい達成感がある。日ごろのトレーニング、チームでの練習も、個人としての練習も、さらには1日の食事、睡眠といったコンディション管理など、勝利に向けて徹底してきたことが報われたような達成感と充実感を与えてくれる。
いつか選手を退く時、選手として残るのは獲得したタイトルの数や記録だ。タイトルは獲るか、獲らないかで大きく変わる。タイトルに大きいも小さいもない。セルティックで、またひとつ星を刻めたことを、選手として光栄に、誇りに思っている。
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著者プロフィール
旗手怜央 (はたて・れお)
1997年11月21日生まれ。三重県鈴鹿市出身。静岡学園高校、順天堂大学を経て、2020年に川崎フロンターレ入り。FWから中盤、サイドバックも務めるなど幅広い活躍でチームのリーグ2連覇に貢献。2021年シーズンはJリーグベストイレブンに選ばれた。またU-24日本代表として東京オリンピックにも出場。2022年3月のカタールW杯アジア最終予選ベトナム戦で、A代表デビューも果たした。2022年1月より、活躍の場をスコットランドのセルティックに移して奮闘中。