久保建英、王者レアル・マドリードを相手に「あと一歩」今季ベストゲームで存在感 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【完璧な技術、適切な判断で存在感】

 では、久保のプレーはどうだったのか?

 件の『エル・ムンド・デポルティーボ』紙は、両チームで最高の三つ星をつけている。

 右サイドでボールを受けると、相変わらず、ほとんどボールを失わない。そしてドリブルに入ると、そのたび戦慄を走らせていた。何度もクロスに成功。同じサイドのヴィニシウス・ジュニオールが劣勢にイラつき、ボールを叩いた後の久保に体当たりし、ブーイングを浴びていたほどだ。

 そして前半24分、久保らしいプレーが出る。

 敵陣内でのプレッシング、左サイド奥でアントニオ・リュディガーがボールを持ったところ、久保はサイドのフェルランド・メンディをケアする様子を見せながら、縦パスに反応し、見事にカット。リュディガーの軽率さ、傲慢さも計算したのか。ボールをコントロールしてひと足早く前に出て、フェデリコ・バルベルデを引きつけると、フリーのルカ・スチッチにパス。だが残念ながら、左足シュートはポストを叩いた。

 戦術面の優秀さ、駆け引きのうまさ、完璧な技術、適切な判断で、久保は存在感を示していた。

 38分に押し込んだ場面では、久保はエリア内で味方のシュートをアシスト後、そのこぼれ球を拾う。すかさず左足を振ったが、惜しくも相手DFのブロックに遭う。

 久保は試合を通じ、攻撃を引っ張っていた。プレーの連続性は特筆に値した。今シーズン、不振が続いていたラ・レアルとしてはベストゲームに等しく、久保がチームを牽引していたのも間違いない。だが......。

「メンディが、久保と対峙する難しい試験をパス」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』はむしろメンディの健闘を称え、久保にはひとつ星しかつけていない。これは『マルカ』紙も同じ。レアル・マドリードの選手がこういう評価のされ方をすること自体、久保が高い評価を受ける裏返しだろう。

 レアル・マドリードが低調だったのは間違いない。しかし、勝ち続ける者たちの分厚さも感じさせた。得点にはならなかったが、キリアン・エムバペの切り返しからのシュートは超人的だった。アルダ・ギュレルの天才性、ルカ・モドリッチの戦術眼、バルベルデの強度など、いずれも超一流。白いユニフォームを身に纏う選手たちは特別だ。

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