レアル・マドリード番記者の今季安心理論「エムバペはロッカールームでうまく馴染んでいる」目指すはシーズン7冠 (3ページ目)

  • ミゲル・アンヘル・ディアス●取材・文 text by Miguel Ángel Díaz

【エムバペとヴィニシウスはとてもうまくやっている】

 エムバペがアタランタ戦でレアル・マドリードでの初ゴールを決めるとともに、最初のタイトルを手にするという夢のようなデビューを飾ったあと、多くのサポーターは彼がすべての試合で得点を挙げると思っていたが、そう簡単にはいかなかった。それでもアンチェロッティは「エムバペの適応は順調にいっている」と考えており、最初の数週間の仕事ぶりに十分満足している。

 アンチェロッティは昨季、ヴィニシウスをセンターフォワード(CF)に起用した試合もあったが、今季の考えはヴィニシウスを左サイドでスタートさせ、エムバペをCFとして起用することだ。しかし、前述したように、チームがボールをキープすれば、皆が自由に動き回ることができる。そのため、エムバペにとってCFとしてゲームを始めることに問題はない。

 実際、ラ・リーガ最初の2ゴールを決めた第4節ベティス戦後のミックスゾーンでその点について質問した際、「フランス代表でもパリ・サンジェルマンでもそうだったように、攻撃の3つのポジションでプレーすることには慣れている」と答えていた。

 エムバペはロッカールームでうまく馴染んでいる。何人かがCLで6度の優勝を経験していることを自覚しており、たとえ自分にスポットライトが当たっているとしても、チームメイトへのリスペクトを欠かさず、自身を無理やり押し出さないことを自然と理解しているようだ。

 一部のメディアは、エムバペとヴィニシウスの間に論争や安易なライバル関係が生まれることを期待しているが、彼らはとてもうまくやっている。その証拠に、どちらがPKを蹴るかの決定方法がふたりの間にはある。もし両者の間に嫉妬心を感じ取っていたなら、おそらくアンチェロッティがキッカーを指名して解決していただろう。しかし、実際にはふたりに自由を与え、自分たちで決めさせるやり方を選んだ。

 第3節のラス・パルマス戦ではヴィニシウスがPKを蹴り、ベティス戦ではエムバペがキッカーを務めたが何の問題もなかった。今のところふたりの共存関係は健全であり、お互いに敬意を抱いている。

 レアル・マドリードのサポーターは非常に厳しい眼を持っている。2001年にジネディーヌ・ジダンと契約した際、チームのバランスが崩れるという意見があり、サンティアゴ・ベルナベウでブーイングが飛ぶこともあった。しかし、ビセンテ・デル・ボスケ(当時の監督)がジダンのために中央のポジションを見出し、ロベルト・カルロスに左サイドを完全に任せ、チームをうまく機能させたことで、サポーターも溜飲を下げていた。

 エムバペがレアル・マドリードで成功を収められないというのはあり得ないことだが、何事にも時間がかかる。1シーズンに7タイトルを獲得したチームは歴史上存在していない。6冠も2度だけだ。それを目指せるチームがあるとすれば、レアル・マドリードしかいない。

 前人未到の目標達成に向け、最大のライバルは過密日程になるだろう。しかし、ケガ人さえ続出しなければ、誰が不可能だと言いきれるだろうか?

※7タイトル
UEFAスーパーカップ/ラ・リーガ/コパ・デル・レイ/スペインスーパーカップ/UEFAチャンピオンズリーグ/FIFAインターコンチネンタルカップ/FIFAクラブワールドカップ

(髙橋智行●翻訳 translation by Takahashi Tomoyuki)

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著者プロフィール

  • 高橋智行

    高橋智行 (たかはし・ともゆき)

    茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、リーガ・エスパニョーラを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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