ユーロ2024準決勝でイングランドがオランダに劇的逆転勝利 優勝候補本命がここまで苦戦続きなのはなぜか? (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【ボール支配ができなくなったオランダ】

 先制ゴールを決めたのはオランダMFシャヴィ・シモンズ(ライプツィヒ)。開始7分、右SBデンゼル・ダンフリース(インテル)が前線に送り込んだボールを拾ったイングランドMFデクラン・ライス(アーセナル)に襲いかかり、ボールを奪取。そのままノリよく前進すると、右足を振り抜いた。シュートは次の瞬間、ゴールの左上に突き刺さっていた。

 イングランドはいきなりスーパーゴールを浴びてしまう。だが、その11分後(前半18分)、ダンフリースの右足裏が、ハリー・ケイン(バイエルン)がシュートに及んだ右足に接触。VARの末にPK判定が下ると、それをケインが決め、試合を振り出しに戻した。そして1-1の状況は、そこから後半45分まで続いた。

 前半18分以降、試合を押したのはイングランド。前半32分、フィル・フォーデン(マンチェスター・シティ)がポスト直撃弾を放つと、逆転は時間の問題かに見えた。後半35分、オランダは1トップ、メンフィス・デパイ(アトレティコ・マドリード)が負傷退場。右ウイングで先発したドニエル・マレン(ドルトムント)を1トップに据える戦術的交代で急場を凌ごうとしたが、奏功せず、イングランドの攻勢をいっそう強める結果を招いた。両軍の差がもっとも顕著になった時間帯だった。

 イングランド対オランダ。過去の対戦を振り返っても、これほど一方的な展開になったことはない。たとえばイングランドが大差をつけてオランダに勝利した試合として知られる自国開催の欧州選手権、ユーロ1996(4-1)でさえ、試合を押していたのはオランダだった。かつてのオランダは、ボール支配率でブラジルにさえ勝るほどだったが、スペインと決勝を争った末に敗れた2010年南アフリカW杯あたりから、支配率も代表チームの力も落ちていく。

 1974年西ドイツW杯で準優勝して以来、世界のトップグループに君臨し続けてきたオランダ。イングランドより高い水準を維持していたが、2014年ブラジルW杯で3位になって以降、右肩下がりに転じた。かつては劣ることはなかった隣国ベルギーにも上を行かれる始末だ。

 イングランドに一方的に支配される姿を見ると、今回フレンキー・デ・ヨング(バルセロナ)、トゥーン・コープマイネルス、マルテン・デ・ローン(ともにアタランタ)のMFトリオをケガで欠くとはいえ、往年のレベルに達していないことを実感させられるのだった。

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