ユーロ2024準決勝でイングランドがオランダに劇的逆転勝利 優勝候補本命がここまで苦戦続きなのはなぜか? (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【イングランドの布陣の問題点】

 1988年の欧州選手権、西ドイツ大会を制した頃のオランダを10とすれば、現在はせいぜい7程度。反対にイングランドは、現在が10の状態にある。自国開催のW杯で優勝した1966年のことはわからないが、ここ50年ぐらいでは断トツのレベルにある。自国開催のW杯でなくても優勝候補の一角に押されそうな高い戦力を誇る。

 大会前、フランスとともに優勝候補の本命に推されるのも当然と言えた。スペインが下馬評でイングランドの後塵を拝すようなことは、10年前なら考えられなかったことである。
 
 今日的な視点に立つとオランダは格下。イングランドにとっては負けるわけにはいかない戦いだった。そのプレッシャーがどれほどプレーに影響を与えたかどうか定かではないが、次第にオランダが息を吹き返す後半の展開は、これまでイングランドが戦ってきた5試合と同様、好ましくない展開に見えた。

 イングランドの布陣は3-4-2-1。ラウンド16のスロバキア戦までは4-2-3-1で戦ってきたが、前戦で、5バックで戦うスイスに合わせて採用した3-4-2-1を、このオランダ戦にもそのまま適用した。

 イングランド式4-2-3-1の問題は、「3」の左を担当するフォーデンが、その場に留まらず、中央あるいは右に移動するため、左の高い位置でプレーする選手がいなくなることだ。左SBのキーラン・トリッピアー(ニューカッスル)がなんとかカバーしようと高い位置を取ったが、彼もまた左でプレーすると攻撃力を発揮できにくいタイプなので、イングランドの左は事実上、穴になっていた。ガレス・サウスゲート監督が3-4-2-1の採用に踏み切った理由だろう。

 しかしその分、攻撃は真ん中に偏った。サイドアタッカーは両サイド各1人。左のトリッピアーは高い位置を取れず、右のブカヨ・サカ(アーセナル)も平均的な立ち位置が10メートルほど下がったので、いつものようにゴールライン際からマイナスのボールを送り込めずにいた。

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