コパ・アメリカで輝きを放った次世代のスター候補たち~大会中に欧州移籍が決まった無名の逸材も (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 またもうひとり、今年1月で20歳になっており、もはや10代ではないものの、今大会で光る才能を見せていたのが、パラグアイのFWフリオ・エンシソである。

 所属するブライトンでは三笘薫のチームメイトであり、これまでの実績以上に日本での知名度は高いと思われるエンシソだが、高い潜在能力はこれからの活躍を十分に期待させるものだ。

 今大会で見せた、独力で局面を打開してチャンスメイクする能力は、パラグアイ代表でも際立っていた。

 ただし、裏を返すと、とにかく自分でやりたがるのが玉に瑕。今大会でも試合後、パラグアイメディアからダニエル・ガルネロ監督に「エンシソは自分勝手にプレーしすぎるのではないか」との疑問がぶつけられるほどだった。

 グループリーグ3戦全敗を受けて解任されたガルネロ監督も「彼と話す必要がある」と語り、また、具体的なプレーにも注文をつけるなど、指揮官が少なからず頭を悩ませていた様子がうかがえた。

 スピードや技術といった部分では問題ないだけに、ブライトンでの活躍のみならず、今後ヨーロッパでさらにステップアップしていくためには、性格的な部分を改めていく必要があるのかもしれない。

 そして最後に、これまでほぼ無名だったことを考えると、今大会最大の発見と言ってもいいのが、コスタリカの19歳、DFジェイランド・ミッチェルである。

 グループリーグでは1勝1敗1分けの成績を残しながら、惜しくも決勝トーナメント進出を逃したコスタリカにあって、ミッチェルは3バックの右DFとして3試合すべてにフル出場。とりわけその存在が注目されたのは、0-0で引き分けた初戦のブラジル戦だった。

 ミッチェルの対面、すなわちブラジルの左サイドと言えば、ヴィニシウスが爆発的な突破力を見せる、まさにチームの得点源。ときにセンターフォワードのロドリゴが左に流れてくることもあり、そこで彼らにやりたい放題にやらせてしまえば、コスタリカとしては勝負にならない。

 ところが、187cmの長身ながらスピードにも優れるミッチェルは、現在世界最高と言ってもいいほどのアタッカー陣を見事に完封。コスタリカのグスタボ・アルファロ監督も「高さとスピードがあり、1対1に強い」と評価する19歳が、大仕事をやってのけた。

 まだ国内リーグのクラブ、アラフエレンセに所属し、コパ・アメリカを前に国際Aマッチ出場がわずか4試合に過ぎなかった未知の才能は、今大会の活躍を通じて俄然ヨーロッパのクラブからも注目を集める存在となったはずだ。

 アルファロ監督はミッチェルについて、「国内リーグで目をつけ、我々のグループに入れた」と言い、「ヨーロッパでプレーできるレベルにある」と、その才能を高く評価する。

 無名ゆえのサプライズというボーナスポイントもプラスして評価すれば、今大会最高の若手選手はミッチェルだと言ってもいいだろう......と、そんなことを書いている最中の7月8日、オランダの名門、フェイエノールトがミッチェルの獲得を突如発表した。

 世界がどれだけ若い才能を欲し、目を光らせているか。その事実を端的に示す好例である。

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