浅野拓磨はリーガで成功できるか アギーレが去ったマジョルカで求められること (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【右サイドでの起用が濃厚】

 一方、右にはエセキエル・アビラやラウール・ガルシアなど本来はストライカーの選手を偽FW的に配置し、攻撃力を高めていた。

 導かれる答えとしては、浅野のポジションは右アタッカーになるか。縦を一気のスプリントで突くイメージで、それはボーフムでも、日本代表でも大きく変わらない。たとえばカタールW杯のドイツ戦のようなプレーができたら、ポジションが与えられるだろう。レアル・マドリードのアントニオ・リュディガーを翻弄して決めたゴールはワールドクラスだ。

 ただ、浅野はラ・リーガでは「うまい」選手ではない。おそらく、技術面ではかなり苦しむだろう。スペインではいくら速くても、サイドでボールを収めたり、機転が利いたり、あるいは連係して守備ができるセンスがないと、たちまち失格の烙印を押される。

 過去を振り返っても、日本人がラ・リーガで活躍するのは簡単ではない。

 大久保は華々しいデビュー戦をやってのけ、降格の危機を救う最後の5試合は「救世主」レベルだったが、それが続かなかった。Jリーグでは最高レベルのテクニシャンである家長ですら、ラ・リーガの強度のなかでは技術を出しきれていない。チームは違うが、中村俊輔、清武弘嗣、柴崎岳も1部では即時撤退を余儀なくされた。

 その点、久保は眩いほどの活躍を見せている。18歳で入団したマジョルカで主力となって、ステップアップ。レアル・ソシエダで覚醒し、昨シーズンはCLベスト16に導く原動力になった。スペイン語をネイティブ同然で使い、スペイン人以上に感情を出しながら戦い、選手やスタッフとコミュニケーションを取れる。彼の場合、適応というより、彼自身がスペイン人のようだということもある。

 そのせいで忘れそうになってしまうが、依然として"ボーダー"は存在している。

 まずはスペイン語を身につけ、ある程度コミュニケーションを取れないと、孤立することになる。デビッド・ベッカムですら、レアル・マドリードでは英語のままで密かに馬鹿にされていた。その点では、ドイツやオランダとも事情が異なる。語学だけでなく、自分のプレースタイルを伝え、味方のプレースタイルをいち早く理解する必要がある。それを試合だけでなく、日々の練習のなかでやり続けることだ。

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