ユーロ2024準決勝4強が抱える強みと弱み 優勝候補筆頭スペインに死角はない? (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【弱点はイングランドの左、オランダの右】

 事実、オランダの準々決勝対トルコ戦の戦いぶりは芳しくなかった。トルコを甘く見たのか、楽をして勝とうとした感じがありありで、秩序に欠ける、ノリの悪い雑なサッカーに陥り大苦戦した。印象を10段階評価で述べれば、ギリギリ5といったところになる。

 スイスを延長PK戦で制したイングランドも、格下に苦戦するという構図は同じで、褒められる出来映えではなかったが、オランダとの比較でいえば上だった。10段階で6程度だろう。

 しかし、だからと言ってこの準決勝が5対6の関係になるとは限らない。イングランドは安定感で勝るが、マックス値ではオランダが勝る。オランダの場合は情緒不安定なところもあるので、そのマックス値が90分間でどれほど維持できるか怪しい限りだが、ツボにハマるとイングランドには拝みにくい高度なプレーが飛び出す。

 具体的な見どころは、左ウイングのポジションでありながら、これまで3ゴール、1アシストを決めるなど、オランダ最大のストロングポイントとなっているコーディ・ガクポ(リバプール)を、イングランドがどう止めるかだ。

 切れ込んでシュートもあれば、縦突破もある。ガクポの凄みはトルコ戦でも存分に発揮されていた。また、メンフィス・デパイ(アトレティコ・マドリード)、シャビ・シモンズ(ライプツィヒ)とのコンビネーションも上々だ。

 ガクポと対峙するイングランドの右SB、カイル・ウォーカー(マンチェスター・シティ)との1対1は、まさにプレミア対決である。ここでウォーカーが押し込まれると、その前方で構えるブカヨ・サカ(アーセナル)は孤立する。

 一方の逆サイドは両チームにとってウィークポイントだ。イングランドにとっての左サイド、オランダにとっての右サイドだ。

 キーラン・トリッピアー(ニューカッスル)とフィル・フォーデン(マンチェスター・シティ)で縦関係を組むイングランドの左。デンゼル・ダンフリース(インテル)がドニエル・マレン(ドルトムント)、ステーフェン・ベルフワイン(アヤックス)、シモンズら複数の選手と縦関係を組むオランダの右だ。

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