ユーロ2024でドイツ代表を蘇らせたトニ・クロース 引退間近の選手の何がすごいのか?

  • 西部謙司●文 text by Nishibe Kenji

西部謙司が考察 サッカースターのセオリー 
第2回 トニ・クロース

日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。第2回は不振にあえいでいたドイツ代表を今回のユーロ2024で蘇らせている、トニ・クロースです。

【史上最高かもしれないユーロ2024のドイツ】

 ユーロ2024の開催国ドイツは、2連勝でグループリーグ突破を決めた。今回のドイツは過去にいくつかあった偉大なチームを超える質を示していて、もしこのまま優勝すれば、ドイツ史上最高と呼ばれるかもしれない。その中心がトニ・クロース(レアル・マドリード→今季で引退)だ。

ユーロ2024で引退するトニ・クロースがドイツ代表を蘇らせた photo by Getty Imagesユーロ2024で引退するトニ・クロースがドイツ代表を蘇らせた photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る 不振を極めていたドイツは、クロースのカムバックとともに蘇っている。イルカイ・ギュンドアン(バルセロナ)、フロリアン・ビルツ(レバークーゼン)、ジャマル・ムシアラ(バイエルン)、カイ・ハヴァーツ(アーセナル)らの技巧派が一斉に開花した。

 ワールドカップ(W杯)優勝4回、欧州選手権(ユーロ)も3回優勝。いずれも強力なチームだったが、クオリティの面で傑出していたのは、1972年欧州選手権(当時西ドイツ)と、2014年ブラジルW杯のチームだ。

 欧州選手権初優勝の1972年(ベルギー大会)は、フランツ・ベッケンバウアーとギュンター・ネッツァーのふたりの司令塔による華麗なパスワークが印象的で、戦術面でも画期的だった。

 まず、「攻撃するリベロ」という新しさ。

 リベロとは、最後尾にいてカバーリングを行なうDFのこと。現在はこのポジション自体がなくなっているが、当時は守備の要として重要視されていた。リベロをその名のとおり「自由人」にしたのがベッケンバウアーである。

 バイエルンではすでに攻撃するリベロとして活躍していたが、10代でデビューした代表チームではずっとMF。リベロとして本格稼働したのは1970年メキシコW杯のあとからだった。

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プロフィール

  • 西部謙司

    西部謙司 (にしべ・けんじ)

    1962年、東京生まれ。サッカー専門誌「ストライカー」の編集記者を経て2002年からフリーランスに。「戦術リストランテ」「Jリーグ新戦術レポート」などシリーズ化している著作のほか、「サッカー 止める蹴る解剖図鑑」(風間八宏著)などの構成も手掛ける。ジェフユナイテッド千葉を追った「犬の生活」、「Jリーグ戦術ラボ」のWEB連載を継続中。

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