ユーロ2024でのスペインの強さを林陵平が解説「ゆっくり攻めてプレスを使い分ける」 (3ページ目)

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【プレスの形を使い分ける】

 スペインというと、ボールポゼッションとか、ボールを握った時のパスワークが注目されがちなんですけど、この大会においてはプレッシングが本当にすばらしいです。ハイプレスがずば抜けていいのが、チームとしてうまくゲームをコントロールできている部分です。

 イタリアもボールを丁寧につないでいくんですけど、なかなか前進できませんでした。ディロレンツォ、アレッサンドロ・バストーニ、リッカルド・カラフィオーリの3枚に対して、スペインがモラタとペドリの2枚で行くと、数的優位を保てるので、ディロレンツォやカラフィオーリが前進できます。

 ところが、スペインはペドリが少し前に出て4-4-2になる時もあれば、ペドリがMFのジョルジーニョを捕まえて、ディロレンツォとカラフィオーリに対してはニコとヤマルが捕まえに行く形もある。これで3対3の数的同数になります。

 こうなると、イタリアは両サイドのディマルコとフェデリコ・キエーザが空いてくるわけです。すごくフリーな状況なんですが、ここにボールが入った時に、例えばククレジャなど間合いの詰め方が非常にうまい。これは最初から前に捕まえに行ってしまうと、背後に相手のCFのスカマッカが流れたり、キエーザ自身にも背後を取られる場面があるんです。だけど、ククレジャは少し間合いを空けておいて、キエーザにボールが出てきた瞬間にプレスをかける。右のカルバハルもうまかったです。

 だからイタリアは、通常であればウイングバックが位置的優位を取れるはずなのに、ククレジャとカルバハルのアプローチが本当にうまかったので、なかなか前進できませんでした。

 こうしたプレスの使い分けですよね。ククレジャとカルバハルの相手ウイングバックの捕まえ方もそうですし、カラフィオーリとディロレンツォに対してそのまま4-3-3でハイプレスしたり、それが無理な時には状況に応じてペドリが前に出て4-4-2でうまく牽制をかけるとか。

 中盤もジョルジーニョに対してファビアン・ルイスが捕まえに行き、両ウイングが中に絞ったダイヤモンドみたいな形になる時もある。だから4-3-3、普通の4-4-2、4-4-2の中盤ダイヤモンド。そのあたりを連動して使い分けられるのが、スペインのすごさだと思います。

 相手からしたら、最初プレッシャーのかけ方はこうだったけど、次は違う形で来られるとなると、迷いも生まれてなかなかうまく前進できない。今後大会が進むにつれて、スペインのハイプレスに対して相手がどう前進できるかも見ていくと、ユーロをより楽しめると思います。

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